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日刊サイゾー トップ > 社会 > 政治・経済  > 横浜カジノ誘致に菅官房長官の利権

”ハマのドン”でも止められず? 横浜カジノ誘致の背後に見える「菅官房長官の利権構造」

横浜港運協会は市の立ち退き交渉には応じない姿勢

 市がカジノ誘致の候補地とする山下ふ頭には、横浜港運協会に加盟する企業のうち38社が持つ約50棟の倉庫や事務所があった。しかし、2015年に横浜市がふ頭の再開発計画を発表、同市は倉庫や事務所を持つ港湾事業者に対して、2022年3月までに山下ふ頭から本牧ふ頭などへの移転するよう交渉を行っている。すでに一部では解体工事が行われているものの、未だに移転に反対している港湾事業者も多く、藤木会長は今回のカジノ誘致の発表を受け改めて、市の立ち退き交渉には応じない姿勢を示した。

 横浜港運協会がここまで強硬な反対姿勢を取るのには伏線がある。

 そもそも日本にカジノを作るという構想が持ち上がったのは、石原慎太郎元東京都知事時代だ。この時、カジノの最有力候補地は「お台場」だった。しかし、さまざまな利権構造やスキャンダルが発覚したことで、石原慎太郎→猪瀬直樹と続いた「お台場カジノ構想」は舛添要一元都知事のスキャンダルによる失脚とともに、小池百合子都知事の下で完全に頓挫する。何しろ、小池知事にとっては「お台場カジノ」よりも知名度が高く、世界的行事である東京オリンピックの開催が“転がり込んできた”からだ。

 そこで浮上してきたのが、横浜市だった。林市長は2014年にカジノを含む統合型リゾート施設のプロジェクトを発足させ、検討を開始した。しかし、「カジノ誘致反対」の市民感情に考慮し、2017年7月の市長選で「カジノ誘致については白紙撤回」を宣言して再選した。

 実は、藤木会長も当初は「カジノ推進派」だった。しかし、カジノが周辺市民に与える影響を懸念し、「市民が納得していないIR・カジノを山下ふ頭で行うことなど到底受け入れられない」と反対に回る。

 藤木会長に近い関係者によると、「藤木会長は部下や自らもが、各国のカジノに出向き、カジノの実態を調べた。その結果、カジノ誘致に反対の立場となった。藤木会長は、山下ふ頭を外資のカジノ業者に明け渡したら、カジノの収益の7割を外資が持っていくことになる。山下ふ頭は“植民地”になる」と考えた。

 そこで藤木会長が取った戦略が“カジノに依存しない山下ふ頭の再開発”だった。藤木会長は2019年4月、横浜港運協会加盟の244社全社が参加する「一般社団法人横浜港ハーバーリゾート協会」を設立し、自らが会長に収まった。

 横浜港運協会と横浜港ハーバーリゾート協会は同年6月27日、カジノ誘致に反対する要望書「山下ふ頭再開発に関する見解と要望」を林市長あてに提出した。そして、同年7月1日には、横浜港ハーバーリゾート協会が山下ふ頭の再開発案を公表した。同案では、展示面積25ヘクタールの国際展示場や国際会議場、高級ホテル、コンサートホールやディズニークルーズなどの大型クルーズ船の拠点を計画している。投資額は7800億円で、年間の純利益は450億円以上を見込む。

 この6月27日のカジノ誘致に反対する要望書提出の際に、横浜市は「(6月)28日以降にコメントする」と説明しており、市から回答がないまま、林市長がカジノ誘致を発表したことが、藤木会長を“烈火のごとく怒らせた”要因の一つでもある。

 そもそも、林市長に対して「顔に泥を塗られた」とまで言い放つ藤木幸夫氏とは、如何なる人物なのか。

 昭和5年8月生まれで横浜市出身。港湾荷役や倉庫事業などを行う「藤木企業」の会長のほか、横浜港運協会会長、横浜港ハーバーリゾート協会会長、横浜エフエム放送社長、横浜スタジアム会長などを務めている。その権力の根源は、藤木会長の父親・藤木幸太郎氏にある。

 藤木企業の前身である「藤木組」は1923年に幸太郎氏が設立した。幸太郎氏は、横浜港の港湾荷役を取りまとめる“顔役”で、現在の広域指定暴力団「稲川会」埋地一家の初代総長を務めた人物でもある。分裂前に日本最大の広域指定暴力団だった「山口組」も神戸港の港湾荷役組織から発祥しており、その山口組の“中興の祖”と言われる三代目の田岡一雄組長と幸太郎氏は昵懇の仲だった。

 藤木幸太郎氏は“ミナトのおやじ”と呼ばれ、横浜港を取り仕切る実力者だった。その息子である幸夫氏は自著『ミナトのせがれ』(神奈川新聞社)の中で、父・幸太郎氏の暴力団や政治家、芸能人など幅広い交友関係を記している。

 横浜が地元の幸太郎氏と、横浜市議会議員から衆議院議員となり、通産大臣、建設大臣などを歴任した小此木彦三郎氏は旧知の間柄。その小此木氏の秘書をしていたのが、菅義偉官房長官である。その後、菅氏は秘書から横浜市議となり、国政に転じて、現在の官房長官にまで登り詰めるわけだが、最初の市議選の時に菅氏を強力にバックアップしたのが、幸夫氏だった。また、幸夫氏は菅官房長官だけではなく、二階俊博・自民党幹事長とも昵懇で中央政界にも太いパイプを持っていると言われている。

 だが、カジノの利権構造は複雑だ。これだけの権力を持っている藤木会長でも、横浜市のカジノ誘致を止めることはできなかった。その背景には、利権を巡る政治構造があるからだろう。

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