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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > 池田大作『人間革命』の評価は?
創価学会「本」ついに完結

累計5400万部、50年超黙殺されてきた創価学会・池田大作の『人間革命』本としての評価は?

――創価学会の池田大作名誉会長による『新・人間革命』が昨年完結を迎えた。同シリーズは毎年ベストセラーになることから、学会員ではなくともその存在は知られているが、この本の「物語」や「商品」としての出来はどんなものだったのだろうか?

『人間革命』は第二代会長・戸田城聖の激動の半生と、教団立ち上げまでを第三代会長・池田大作が書き上げた。

『人間革命』は第二代会長・戸田城聖の激動の半生と、教団立ち上げまでを第三代会長・池田大作が書き上げた。

 出版取次大手の日販とトーハンが発表した、今年上半期のベストセラー本。昨年9月に他界した女優・樹木希林の『一切なりゆき』(文藝春秋)が両社のランキングで総合1位に、『樹木希林 120の遺言』(宝島社)も日販3位に入り、話題になった。

 一方、その陰に隠れている印象を受けるのが、両ランキングで総合2位にランクインした『新・人間革命 第30巻 下』(聖教新聞社)である。これは国内最大の新宗教団体「創価学会」の池田大作名誉会長が、「聖教新聞」で25年近くにわたり毎日連載していた日本史上「最長の新聞小説」の最終巻だ。

自己啓発本を50倍くらい濃くした読まれ方

 1965年元日号~93年まで「聖教新聞」に連載された『人間革命』は、戦時中に牢獄に入れられた第二代会長の戸田城聖が出獄するシーンから物語が始まり、戸田の死後、若き山本伸一(=池田大作)が創価学会の第三代会長に就任して広宣流布の使命を引き受けることで終わる。

「『人間革命』は創価学会の真実の歴史が描かれた物語としてだけではなく、若き山本伸一や周囲の会員たちの奮闘の姿を通して、自らの悩みや苦しみの解決策を読みとっていくという、自己啓発本を50倍くらい濃くした読まれ方がされています。自らの悩みをぶつけながら同書を読み、仏法という教えの一端を涙ながらに理解し、実践していく……。これは『身読』と呼ばれ、会員として推奨される読み方のひとつとされています」とは、現役の学会員。

 続編の『新・人間革命』は、会長に就任した山本がハワイに訪れて世界広布を開始するところから始まり、最終巻では長年対立してきた日蓮正宗の迫害から会員を守るために会長を辞任。その後、反転攻勢をかけて、日蓮正宗から破門されるが、それを「魂の独立」として捉え、青年たちに「創価三代の師弟の魂を受け継いでもらいたい」と訴えて、完結を迎える。

 同書は創価学会という組織の中で、どのような機能を果たしてきたのだろうか? 戦後日本の宗教史を専門とする創価大学名誉教授の中野毅氏は、こう語る。
「もともと『人間革命』は第二代会長の戸田が始めた連載小説のタイトルであり、さらに『人間革命』という言葉自体は、戦後最初の東京大学総長である南原繁が、卒業生へ祝辞などで使った言葉でした。南原は、戦後の日本は政治も社会も大きく変わる必要があるが、最も重要なのは日本国民の精神的変革であり、そのためには(キリスト教信仰に基づく)精神革命、『人間革命』が必要だと説きました。それに対して戸田は『キリスト教で真の人間革命はできず、日蓮の仏法でしか人間革命はできない。実際に自分はそのことを、身をもって体験した』という思いから、自身の小説のタイトルにしたようです。それを引き継いだのが池田第三代会長による『人間革命』『新・人間革命』です。同書は折伏(布教活動)などにも活用されてきましたが、いまや創価学会の中心的聖典となったとも言えます。特に『新・人間革命』は今を生きている一般の会員が会長と共に物語に登場して描かれることから、池田会長への信頼感や親近感、師弟不二の感情や使命感を高める『参加型の聖典形成』という重要な働きもあったと思います」

 他方で出版流通の側面から同書を見てみると、65年に第1巻がミリオンセラーになったのを皮切りに、書店では毎年、確実に大口で売れる商品として非常に魅力的な存在となっている。ある出版関係者はこう語る。

「『人間革命』はひとりの購入者が20~30冊注文することもあり、個人商店でも100~200冊近くは売れます。さらに大型書店は棚に揃えるために置くこともありますが、同書は通常の委託販売とは違って、買い切り【註:返品しないことを条件に仕入れる商品】扱いのため、消化率100%で『広辞苑』(岩波書店)の売れ方に近いですね」

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