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テレビウォッチャー・飲用てれびの「テレビ日記」

カジサック、フワちゃん……YouTube芸人の生きざま

フワちゃんインスタグラムより

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(9月1~7日)見たテレビの気になる発言をピックアップします。

フワちゃん「おはピヨ! フワちゃんで~す!」

 芸人にとってYouTubeは敵。明石家さんまが、そんな趣旨の発言をしたことがある。1人でも多くの人にテレビを見てもらいたいという思いで仕事をしている自分たち芸人にとって、YouTubeは戦うべき相手だ。特に若い視聴者をYouTubeから取り戻さないといけないのだ、と。テレビの第一線で数十年活動し続けてきた芸人の、矜持を示す言葉である。

 けれど、芸人がYouTubeにチャンネルを持ち、動画を投稿することは、もはや当たり前の現象になっている。テレビで有名になった芸人がYouTubeに動画を上げるだけではなく、無名の芸人がYouTubeで人気になり、テレビに出るというケースも散見される。

 その代表格がフワちゃんだろう。かつてワタナベエンターテインメントに所属する芸人だった彼女は、日の目を見る前に事務所を解雇。以後、フリーで活動を続けていたところ、YouTubeに投稿した動画が面白いと話題になった。ネット上での人気を追い風にテレビでの露出も増え、『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ系)では現在、ほぼ毎週出演している。トレードマークは蛍光色のスポーツブラとホットパンツ、そしてスマホと自撮り棒。ちなみに、あのお団子の髪形は、ビビアン・スーのマネから始まったらしい。

 そんなフワちゃんが7日の『ゴッドタン』(テレビ東京系)に出演していた。この日の企画は、ストイックなコント職人として知られる東京03・飯塚に、お笑いを語り合える若い友達を作ってあげようというもの。その友達候補の1人がフワちゃんだった。

「おはピヨ! フワちゃんで~す!」

 そういって登場するなりスマホで飯塚らを撮影し始めたフワちゃんに、飯塚は早々に白旗を揚げる。

「絶対無理! 一番友達になりたくないタイプだもん」

 なるほど確かに、練り上げられた構成と高い演技力で魅せるコントを披露してきた飯塚と、テンション高く野放図に振る舞っているように見えるフワちゃんの間には、大きな隔たりがあるようにも思う。

 だけどフワちゃん、ただテンションが高いだけの芸人ではない。そう感じたのは、『チルテレ』(BS日テレ、8月1日)のインタビューを見たときだった。座右の銘を聞かれた彼女は、いつものヘラヘラした調子から少しだけ真面目な顔つきに変わり、こんなふうに答えた。

「自分でやってて楽しいことをしたいなと思って(今の仕事を)始めたから、それに従ってやるようにしています」

 座右の銘は? という問いかけに対する答えではないようにも思う。けれど、ここから読み取るべきは、実感を伴わないことわざや偉人の格言に頼るのではなく、自分の内側から出てくる手触りのある言葉を指針にするという姿勢なのかもしれない。

 フワちゃんの話は続く。自分が楽しいことをしたい。自分が最高だと思うことをしたい。だからあまり、人の意見は聞かない。偉そうにアドバイスをしてくる人がいると、ケンカにならないよう表面上は「そうですよねー」と受け流すが、心の中では「知ーらんべー」と舌を出していたりする。

 そう語る彼女は、しかし、これはあくまで自分のやり方だと付言した。

「私はそういうポリシーだけど、人のことを吸収して育ったほうがいいっていう人もいるだろうから。自分にどういうのが向いてるかっていうのを、自分で分析して、自分で分析した通りにやることが大切だなと思います」

 自分の意見の発信が、他人への押し付けになっているかもしれない。そんな気配を察知すると即座にフォローを挟む。タガが外れたようなテンションでも、番組収録中にスマホで中継を始めるといった行動でもなく、こういった配慮が自然に出てくるところが最もインターネット的なのかもしれない。

 テレビのバラエティ番組ではなくYouTubeで頭角を現したフワちゃん。お笑い怪獣が「戦場」と呼ぶ場所の外からやって来た彼女は、自分から敵を作らない。

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