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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > テレ朝・弘中綾香が広げる可能性
テレビウォッチャー・飲用てれびの「テレビ日記」

テレ朝・弘中綾香が拡張する「女子アナ」の定義

弘中綾香インスタグラムより

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(8月25~31日)見たテレビの気になる発言をピックアップします

太田光「芸っていうものが、実はなんでもクリアしていくための武器になる」

 新商品につながるアイデアの生み出し方をレクチャーする。そんなシーンで爆笑問題の太田が熱く語ったのは、「芸」のことだった。お笑い芸人が企業を訪ねてビジネス講座を開く『芸人先生』(NHK Eテレ)。その26日の放送でのことである。

 太田は語る。東日本大震災の発生後、最初にテレビのネタ番組に出演したときのこと。当然、ほかの芸人は震災に触れないネタを披露した。しかし、爆笑問題は事情が違う。普段から時事ネタ漫才をやっている自分たちが、これだけ大きな出来事に触れなかったとしたら、むしろ触れたとき以上の意味を持ってしまうだろう。

 考え抜いた結果、「ぽぽぽぽ~ん」というフレーズが強い印象を残したACジャパンのCMを切り口にすることにした。震災に直接言及するのではなく、多くのスポンサーがテレビCMを自粛し、一斉に公共広告に切り替わった状況、震災に動揺した世間を俎上に載せたのだ。

 太田はここに「芸」があるという。ストレートに取り上げると笑いに結びつかない事象を、いかに視聴者の共感を得る形でネタに昇華できるか。テレビの放送に乗せられるか。ここに「芸」が宿るのだ、と。

「やっぱ芸っていうものが、実はなんでもクリアしていくための武器になる」

 あるいは番組後半、社員から爆笑問題に次のような相談が寄せられる場面があった。新商品を作る際、最初はお客さんに届けたい商品は何かという発想から開発が始まるが、徐々に会社の中で決裁権を持つ人たちの意向を考えるようになってしまう。漫才を作る際にも、いつの間にか目的を見失ったりすることはないのか?

 これに太田は次のように答えた。ネタの一部が聞き手に「引っかかり」を感じさせてしまうと思ったら、自分たちも少し言い方を変えてみたり、先にフォローを入れたりという工夫はしているかもしれない。たとえば、「こんなことを言うと誤解されるかもしれませんけど」と前振りした後で本音を語るとか。

「(そうすることで)共感にもつながるし。急に危ないことを言ったらやっぱり、お客も引くんですよね」

 同じように、決裁権を持つ人の意向を考慮した提案をするのは、間違っていないだろう。むしろそこを考慮することが、より魅力的な提案のためには必要なのかもしれない。

「それで縛られちゃうって思うかもしんないけど、そこを考えないと、突っ走っちゃうと、まったく人の共感を得られないものになっちゃうから」

 しばしば「毒舌」と評される太田は、テレビや世間の枠組みを無視して突っ走っているように見える。しかし、話を聞く限り、彼は枠組みの中でどこまで自身の考える笑いを表現できるか、それを「芸」として追求しているのだ。太田はしばしば感情の高ぶりを隠さずに語る。しかし、その言葉は途中で何度も詰まりながら、ときにたどたどしく発される。解放と抑制のバランスを保ちながら語る姿に、まさに彼がいうところの「芸」が体現されているようにも思う。

 アイデアの生み出し方に関するビジネス講座で太田が語ったのは、「芸」についてだった。しかしそれは、ビジネス講座という枠組みの中で、ビジネスにも通じるメッセージになっていた。

 太田は「芸」を語りつつ、「芸」を実践していた。

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