深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.546
最高のセックスパートナーは“いとこ”だった!? 世界の終わりを誰と過ごすか『火口のふたり』
2019/08/30 20:00
#パンドラ映画館
もしも世界が滅亡すると決まったら、最期の日々は誰と過ごすか。いちばん最期のセックスは誰とするか。直木賞作家・白石一文の同名小説を映画化した『火口のふたり』は、そんな問いを我々に投げ掛けてくる。原作では白石の故郷・福岡が舞台だったが、映画では東日本大震災後の秋田に移し替えてある。同じ東北でも太平洋側に比べ、日本海側の被害は少なくて済んだ。安堵感と後ろめたさが混在する地方都市で、人生に行き詰まった男女が刹那的な快楽に溺れる日々を送ることになる。
この物語の登場人物は2人っきり。青春時代の終わりを描いた主演作『きみの鳥はうたえる』(18)が高く評価された柄本佑、被災住宅で暮らしながら週末だけデリヘル嬢として働く主人公を『彼女の人生は間違いじゃない』(17)で熱演した瀧内公美の2人だけで物語が進む。ロマンポルノ出身、『ヴァイブレーター』(03)や『海を感じる時』(14)が話題となったベテラン脚本家・荒井晴彦が監督も務めている。R18指定の赤裸々な愛の形を描いた官能作だ。
主人公の賢治(柄本佑)と直子(瀧内公美)は“いとこ”同士。同じ家で兄妹同然に育った仲だった。高校を卒業した賢治は逃げるように、東京の大学へ進学。やがて直子も、東京の専門学校に通い始める。家族の目の届かない東京で、2人は体の関係を結ぶことになる。就職した賢治があっさり結婚し、2人の関係はそれで終わったはずだった。だが、30歳を過ぎた賢治は結婚生活に失敗し、勤めていた会社も退職。東京でプー太郎となっていた賢治は、直子が地元で結婚することを知り、その結婚式に出席するために久しぶりに帰郷する。
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