『べしゃり暮らし』半裸で雪の夜道を歩く破滅型芸人の姿に、早逝した昭和の落語家を思い出す
#べしゃり暮らし
『べしゃり暮らし』屈指の名言が登場
「じゃないほう芸人」という言葉がある。コンビ間に格差が生じるのは、お笑い界のあるあるのひとつだ。ネタを作り、人気も自分より先行する駿河に嫉妬した尾上。でも、悔しさを覚えながら、誰よりも駿河を認め尊敬している。それでいて、笑いに真摯で面倒見のいい人間性。複雑で魅力的な役柄を、尾上は好演した。「俺が金本の一番のファンや」の言葉は明らかに本音で、それだけに余計つらさが増してくる。
その後、次第に尾上が台頭し、2人は不仲になった。しかし、間宮との出会いでデジきんは打ち解け、NMCで決勝に進出した。母をディスる父のネタを嫌った息子も尾上を尊敬し、仕事も家庭もようやくうまく行き始める。東京進出を視野に入れた尾上は、都内の物件をリサーチした。1人で上京してワンルームに住むか、家族を引き連れて2LDKに住むか。悩む尾上に向けて、駿河から『べしゃり暮らし』屈指の名言が飛び出す。
「2LDKにしとけ。優勝したら文句言わんやろ、嫁も子どもも」
破滅的に命を落とす芸人、残された芸人
仕事が好調の芸人が、何かのトラブルで世間的に抹殺されたり、テレビに出れなくなったり、事故に巻き込まれて急ブレーキが掛かる。悲しいかな、これもあるあるのひとつだ。
1人で酒を飲み泥酔していた尾上は、NMCで決勝に進出したと知り大喜び。酔うと脱ぎ癖が出る彼は服を脱ぎ捨て、雪の降る冬の往来を半裸で徘徊した。足元はおぼつかず、車に轢かれそうになる姿は見るからに危なっかしい。この光景に、唐突にかぶさるクリスマスソングのBGMが、逆に不穏さを喚起する。裸で外の階段に腰を下ろした尾上に雪が降り積もった。そのまま、彼は眠ってしまった。
『べしゃり暮らし』ホームページが、ちょっとひどい。第6話ストーリーのページに訪れると、思いっきり重要部分のネタバレをしているのだ。はっきりと「突然、藤川の訃報が入る」と明かしている。
2人きりのコンビなのに、先に逝ってしまった尾上。上機嫌になって、半裸で「散歩行く!」とバーから飛び出す流れ。酒に酔い、「トラックと相撲を取る」と言い残して交通事故で他界した林家小染(4代目)を思い出させる。
相方に旅立たれ、その後はピン芸人として活動する駿河。命の落とし方はまったく違うが、境遇としてカンニング竹山を思い出す。これらすべて、悲しみをはらむ芸人特有の生き方として挙げられると思う。
注目するべきは残された側、駿河の姿だ。相方がいなくなった後、芸人はどうするのか? 次回は、『べしゃり暮らし』における最大のピークともいえるエピソード。駿河の激情と熱演を期待したい。
(文=寺西ジャジューカ)
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