【京東商城】中国のイーコマース企業が作った「完全無人倉庫」の内情とは?
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もうひとつ、中国のスマート物流がこれから大きなトレンドになる背景がある。それが中国の高齢化と人手不足の問題だ。
中国は、約14億人という世界最大の人口を抱えている大国だ。だから人材を安く使うことができ、余剰労働力がたくさんあるように思うが、話はそんなに簡単ではない。
まず国連の予想によると、中国の人口は2030年をピークにして減少してゆく。何よりも高齢化がとても早いスピードで進行し、2015年に9.7%だった高齢化率(65歳以上)は、2035年には20%を超えてゆき、2060年には30.5%に到達する。
つまり数字だけみると、中国は2050年頃には現在の日本と変わらない「超高齢化社会」を迎える。人口そのものは多くても、白髪の人がものすごく増えることになる。
さらに、中国がどんどんと豊かな国になっていることに伴って、若い世代は肉体労働を伴う仕事をしたくないという傾向が明らかになっている。
「私の教えている学生たちで、アルバイトをしている子はほとんどいません。彼らはプライドが高いので、ブルーカラー的な仕事は絶対にしません」と、先日お会いした、対外経済貿易大学の西村友作教授は語っていた。
これは、中国にとっては徐々に社会問題になっているという。なぜならテクノロジー国家として注目されるようになっている中国だが、実はその最新のサービスの裏側には、かなりアナログな「人海戦術」があることは周知の事実だからだ。
出前アプリを使えば、30分でホカホカの料理を持ってきてくれるのは、電動バイクにまたがって、危険をかえりみずに猛スピードで走ってくれる配達員がいるからだ。彼らはスマホに親しんだ「新世代農民工」と呼ばれる存在で、地方から都市部に移ってきては、デジタル社会を底辺から支えている。
ネットショッピングで注文した商品がすぐに手元に届くのは、郊外にある巨大な物流倉庫などで、同じく無数の商品をさばいてくれる労働力があるおかげだ。もし人手が足りなくなれば、こうしたサービスは価格が高騰して、これまでのように機能することが難しくなる。
いったん便利になったサービスは、いくら人の手が足りなくなっても、人間はずっと使い続けようとするものだ。だから中国は世界最大の人口を抱える国から、世界最大のロボットを抱える国になっていく。スマート物流分野は、その試金石となるエリアなのだ。(月刊サイゾー6月号より)
●後藤直義(ごとう・なおよし)
1981年生まれ。青山学院大学文学部卒。毎日新聞社、週刊ダイヤモンドを経て、2016年4月にソーシャル経済メディア『NewsPicks』に移籍し、企業報道チームを立ち上げる。グローバルにテクノロジー企業を取材し、著書に『アップル帝国の正体』(文藝春秋)など。
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