NHK『どすこい!夢の大相撲』紺野美沙子の熱すぎる相撲愛と「AI夢の対決」の可能性
#大相撲 #熱血!”文化系”スポーツ部
まさに夏の夜の夢。9日放送の『どすこい!夢の大相撲 ~令和元年 AI場所~』(NHK総合)は、NHKの進取の精神を感じさせてくれる良企画だった。
大相撲史に名を刻む横綱同士が対戦したら、いったい勝つのは誰なのか? という妄想は相撲ファンなら誰もが一度は通る道。そんな夢の企画を、NHKが誇るアーカイブを十二分に生かし、日本IBMの技術協力のもと、筑波大学の体育系准教授までもが監修にあたり、日本相撲協会の生き字引ともいうべき親方の考察とともに再現していく。
具体的には、映像記録がしっかりと残る第44代横綱・栃錦以降の29人の横綱の中から、チームごとにドラフト形式で3人を選出。先鋒・中堅・大将に分かれ、それぞれの現役時代のデータをもとにAIによって勝敗を決していく内容だ。
歓声や行司の声などがもっとあれば、臨場感を足せるのでは? と思わないでもなかったが、AI相撲自体は思いのほか見応え十分。土俵際の逆転劇では思わず「おぉ!」と声が漏れてしまう場面もあった。
ネット上での評価を散見すると、「勝敗の結果に納得がいかない」と憤る声も少なくないが、この手の企画では避けようのない議論。本稿ではもっと別な点から、今回の企画の意義深い点を振り返っておきたい。とにもかくにも良かったのは人選。それは選ばれた「9人の横綱たち」ではなく、その横綱を選ぶ演者たちのこと。
「博識部屋」は、相撲ファン歴約半世紀の2人、紺野美沙子とやくみつる。
「小町部屋」は、若手&スー女代表格ともいえる市川紗椰と山根千佳。
「爆笑部屋」は、相撲ネタでの露出も多い芸人枠、キンボシ西田淳裕とはなわ。
そして、解説役であり、ナビゲーター役を務めたのが江戸時代からの相撲を見続けてきたであろうデーモン閣下(実際に閣下は、今回の番組企画では扱いきれない「映像がない時代の横綱」を解説するコーナーも任されていた。さすがNHK、使い方をわかってる)。
いずれも相撲雑誌で連載を持っていたり、大相撲中継にゲストで呼ばれることも多い、芸能界を代表する好角家ばかり。また、上記3つの部屋がどの横綱を選ぶのか、という「横綱ドラフト」でアナウンスを務めたのは、TBSが毎年中継する『プロ野球ドラフト会議』でアナウンスを務める関野浩之。この配役も素晴らしかった。
民放がこの手の企画に手を出したのならば必ずブッキングされたであろう、ジャニーズ枠も旬な芸人枠も一切ゼロ。好角家しかいないのだから、あとはその愛と熱量を楽しめばいいだけ。むしろその「異様な熱」こそがおかしみを生むのだ。
象徴的だったのが紺野美沙子の存在感だった。というのも、番組冒頭からひとりで勝手に泣きだす始末。「どうしたの?」と心配するほかの出演者たちに「だって、この力士が(AIででも)復活したら泣いちゃう!」と切り返して、出足のよさを見せつけていた。
それ以外にも、唐突に「大鵬ぉー!」と掛け声をかけたかと思えば、「大鵬が2番続けて負けるなんて。もう、(投げる)座布団1枚も残ってないですよ」と粋なコメントで憤って見せたりと、紺野の独り舞台ならぬ独り相撲状態。喜怒哀楽が激しすぎて、それが妙な色気に感じてしまう場面もあった。
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