怒号飛び交う美奈子一家の『ザ・ノンフィクション』 母の夫は「父親」でなければならないのか
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)は13日、「ビッグダディ」こと林下清志さんの元妻としてTVバラエティで有名になった美奈子さんの家族に密着した「新・漂流家族 2019夏 ~美奈子と夫と8人の子供~ 前編」を放送した。今年2月に放送され大きな反響を呼んだ「新・漂流家族」の続編にあたり、20日に後編が放送予定となっている。
美奈子さんは2015年5月に元プロレスラー・佐々木義人さんと再婚。義人さんは初婚で、美奈子さんは4度目の結婚だ。2017年4月に第七子となる六女が、昨年11月には第八子となる七女が誕生した。一家は埼玉県で4LDKの中古一戸建てに住まいを構えている。
今年2月に放送された「新・漂流家族」は、主に美奈子さんが七女を妊娠している時期に密着した内容だった。“正義感が強く綺麗好きで几帳面な性格”だという義人さんと美奈子さんは育児方針を巡る夫婦喧嘩が絶えず、特に長男(当時18歳)、長女(当時16歳)と義人さんの関係は良好ではなかった。夫婦喧嘩によって義人さんは家出を繰り返し、「離婚」を口にすることもあったが、夫婦は和解。義人さんは確執のある長男と長女にも「父親だと認めてもらえるよう、色々な問題を解決して頑張りたい」と語っていた。
それから半年あまり。「新・漂流家族 2019夏」は、2月の放送から2週間後の家族の様子から、始まった。美奈子さんと義人さんは相変わらず育児方針で喧嘩をしているが、「それ以外で喧嘩することはない」という。ただし両者ともに「全然引かない、引きたくない」ため、家にいても子どもたちに悪影響だと思い、義人さんは喧嘩になると家出するそうだ。とはいえ、夫婦仲が険悪というわけではないように見えた。
一方で、義人さんと長男・長女との確執は続いていた。義人さんとの衝突に嫌気が差して家を出た長男は「新・漂流家族」の後編放送にて、番組スタッフに「(家族とは)もう関わらないつもりで縁も切ろうと思います。なんかもう面倒くさいので」と語っていた。長女も「お父さんは頭が固い」「今は我慢して、18歳になってひとり暮らしできれば」と距離を置く。
もうすぐ20歳を迎える長男は、通信制高校を中退し、知人宅を転々としながらその日暮らしの生活を送っていた。今は特に仕事はしていないという。そんな長男に、美奈子さんは義人さんが心配していることを伝え、「よっちゃん(義人さんとも)うまくいって欲しいと私は思っている」「(義人さんは)“ちゃんとお父さんにならなきゃ”って一生懸命頑張りすぎちゃって、力んじゃっている感じ。今までお父さんが何人かいたじゃん。私の目線から言わせると、誰よりも子どものことは思っている気がする」「家族みたいになれたらいいなとは思っている」「みんなで仲良くなれたらそれが一番だよね」と語りかける。長男も義人さんについて「下の子に対してはすごく優しい」とは思っているという。しかし、彼は今さら、“母の再婚相手”と、“父と息子”の関係を気づかなければいけないのだろうか。
美奈子さんは番組スタッフに、自身が16歳の時に誕生した長男について「父親の愛っていうのを知らないのかなって。父親によって愛情のかけられ方が違うから、どれが本物なの?って思っちゃってんのかな」「ちょっと遅い反抗期がきてるのかな」と言い、義人さんに相談する。しかし義人さんは、「近くで住まいを……」という美奈子さんの提案に反対する。家で生活しながらアルバイトでお金を貯めてやりたいことを見つけるべきというのが義人さんの考えだ。
義人さんは長男を手厳しく批判。
「一回落ちるところまで落ちればいい」
「あいつ(長男)がはっきり言ってなまくらで、ボケボケボケボケ生きてきただけだろ」
「(以前スマホの利用時間で注意してきたことなどは)これまであいつのために言ってきたのにわかっていない」
「わかってきていないことが今結果に出てんだよ」
「ああいうふうになってほしくなかったから今まで色々言ってきたんだよ」
「家に戻ってきても逆効果だと思うよ」
夫による息子への批判を聞く美奈子さんの目からは、涙が流れていた。美奈子さんは、番組スタッフに、「(長男は)ひとりで生きていける力はまだないのかなって私は思っちゃうけど、甘いのかな? わからないんだけど。何が正解かよくわかんなくて。でも今は助けてあげたいっていう気持ちがある」と心情を吐露するのであった。
17歳になった長女もまた、高校を中退した。番組スタッフに理由を聞かれた長女は「将来したいことが見つからなくて。ダラダラというかズルズル学校続けちゃった感じで」と語る。高校生の時点で将来の職業を明確に定めている生徒など決して多くないだろうが、当初は反対していた美奈子さんも「自分にやる気がなかったら続かない」と納得したそうだ。
長女は義人さんについて「今までの生活習慣を急に変えるって結構きついじゃないですか。それを押し付けるかのように、俺が父親になったんだからこれはこうしろよ、みたいなのが、ちょっと違うんじゃないのかなって思います」と、冷静に不満を述べる。家を出て自立して距離を置きたいそうだが、それならばなおのこと、高校を卒業して「やりたい仕事」かどうかわからなくとも就職するという選択肢を残したほうがよかったのではないか。
長女の高校中退について義人さんは「がっかりしましたね」と憤り、「高校やめるなら家を出ていけ」「他の子に影響を与えちゃうから」ときつく言ったのだという。長女が門限を守らなかったことなどにも触れ、「今となってはどうでもいい」「お好きにどうぞって感じです」「俺からは手を差し伸べない」「誰に言われても俺の気持ちは変わらない」と、突き放していた。
長男への誤解
「新・漂流家族」は、ステップファミリーの物語だ。あくまでも“父親”になろうとする義人さんと、そのやり方に反発する子供たち。母親が再婚したとはいえ、いきなり「父親として接するから、息子・娘として振る舞うこと」を要求されれば、うまくいくものもいかないだろう。子供らの母親は美奈子さんだが、美奈子さんの夫で幼い子らの父親である義人さんが、長男や長女の“父親”でなければならないという道理もない。「父親になりたい」のは、義人さんの勝手だろう。たとえ子供たちのため、良かれと思ってしていることだとしても、それが長男や長女をひどく傷つけていることについてはどう考えているのだろうか。
今回、長男と義人さんの関係にわずかだが雪解けを感じる変化が生じた。3月、家を出ていた長男が突然帰宅したのだ。長男は「俺ひとり暮らししようと思って、こっちでバイト探そうと思って、新しい家が決まるまででいいんだけどその間、(家に)いさせてくれない?」と義人さんに頼み、義人さんの答えは「全然いていいよ」。
しかし、家出後に職を転々としていたという長男の話を聞くと、義人さんは怒り出した。
「屁理屈にしか聞こえない」
「今まで何十個もバイトしてきているだろ。それじゃあもういい加減ダメだよ」
「やりたいことはないけど、何かのためにお金を貯めていくんだよ」
そして医薬品の「治験モニター」のバイト(高収入だがリスクも伴う)をしたいという長男に、激高。
「ふざけるな」
「お前腐ってるな」
「ちゃんと真面目に仕事して金貯めていくんだよ!」
「そんなのやれよって言う親がいるかよ!」
「お前自分の子どもができて、そんなこと言ったらどう思う?」
「そんな簡単に稼げねーんだよ、金なんて」
「色々なことから逃げているんだよお前は」
「逃げすぎてる。逃げすぎて逃げすぎて19歳」
反論の隙を与えない罵倒。だが、長男の高校進学に関して、義人さんはある誤解をしていたことが発覚する。中学卒業後、長男が三重県の通信制高校の料理人コースに入学したことについて義人さんは、美奈子さんが決めたことで長男の意思ではないと認識していたが、長男は「決めた理由が違うよ」と涙ながらに事実を語ったのだ。
長男は友達と同じ普通科高校に行きたかったが、「(美奈子さんに)お金がどうのこうのと言われたから自分で稼いでいける学校にした。行きたかった、(友達と同じ)高校に」と本音を明かした。その当時、美奈子さんと義人さんは結婚したばかりで経済的に余裕がなく、美奈子さんは長男に「自分で学費出してくれたら助かる」と言っていたのだ。
義人さんはこのことを知らなかったと言い、長男に「それは悪かった。ごめん」と謝罪。「俺もお前のことずっと気にしていた。お前が家からいなくなった時もすごく寂しかったし」「お前はこの家に住んで、やりたいことを見つけて生活してみろ」と、一転して優しさを見せる。番組スタッフにも「あいつも本当に困っていたと思います」と長男を慮る。ただ一週間後、やはりひとり暮らしをしたいと考える長男は、アルバイトの面接に向かうのだが。
ステップファミリーとして、「うまくいかない」様子をありのままに見せてきた佐々木家の「新・漂流家族」。幼い子供たちが大勢いる家庭で怒号が飛び交う映像に、「見ていられない」「つらい」という視聴者の感想も多い。だが義人さんも美奈子さんも「ウチはウチだから、これでいいんだ」と開き直っているわけではない。結婚から4年、今もずっと家族での生活をもっと良いものにしたいと模索中で、正解を探している。
次週「後編」が放送されても、彼らの日常はまだ続く。そこに正解はなく、簡単にたどり着けるハッピーエンドもないのだろう。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事