加藤浩次の反乱は無駄じゃなかった? 吉本興業「専属エージェント契約」の功罪
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組織改革が注目されている吉本興業が、従来の専属マネジメント契約のほかに、「専属エージェント契約」を導入する方針を明らかにした。極楽とんぼの加藤浩次が提案し、騒動を受けて設置された「経営アドバイザリー委員会」での話し合いを経て、導入が決まったという。
「基本的には、仕事をオファーするクライアントとの交渉を吉本が担当するという契約。ギャランティーはクライアントから芸人サイドに直接振り込まれ、そのギャラから決められたパーセンテージが芸人から吉本に行く、というシステムです。吉本は、芸人のスケジュール管理は担当せず、あくまでクライアントとの交渉のみを担当します」(芸能事務所関係者)
この「エージェント契約」を導入するのは、日本の芸能界で初めてだと報じられているが、実際にはそういうわけでもない。
「明確に『エージェント契約』と銘打っているケースはないですが、たとえばミュージシャンには、事実上のエージェント契約がすでにあります。本業が別にあるミュージシャンなどは、ライブのブッキングや音源制作の仕切りだけを事務所に依頼して、それ以外の活動は完全に個人で自由にやっているというケースが少なくない。この場合、事務所はあくまでもアーティストとレコード会社やイベンターの間で交渉するだけの存在であり、事実上のエージェントという形になる。あるいは、小規模のバンドだと、全国ツアーのブッキングは自分でやって、音源制作に関するレコード会社との交渉だけを事務所にまかせるというパターンもあります」(音楽業界関係者)
また、大学教授や作家といった文化人タレントについては、実質的なエージェント契約となっているケースがある。
「文化人タレントは、テレビやラジオの仕事以外にも連載や書籍の執筆、講演など細かい活動が多い。芸能事務所に所属していても、執筆や講演の仕事はその事務所仕切りでないことが多い。この場合、あくまで芸能事務所はテレビ・ラジオ出演時のエージェントであり、出版関連の仕事は自分が直で受けるか、別のエージェントが存在する。タレントの蛭子能収さんが漫画やイラストの依頼を受ける場合は事務所がノータッチになるとか、そういうケースです」(出版業界関係者)
この「専属エージェント契約」が、吉本興業に導入されることで芸人たちの労働環境は大きく変わっていくという。
「一番大きいのは、吉本を通さなくても自由に仕事ができるようになること。これまでなら、たとえば自分の得意分野の趣味を活かして、個人的付き合いで取ってきた仕事であっても、ギャラは一旦吉本に入ってから、その何割かが芸人に入ってくるシステムだった。
それがエージェント契約であれば、吉本が交渉していない仕事については、全部自分のギャラになる。といって、吉本が持つ劇場での出番がメインとなるような芸人にしてみれば、“社内仕事”がほとんどなので、エージェント契約をする意味はまったくないでしょう。黙っていても仕事のオファーがくるような一部の芸人にしか関係ない話です」(前出・芸能事務所関係者)
また、吉本が「専属エージェント契約」と発表したことも見逃してはならない。
「“専属”という言葉が何を意味するのかが、気になります。芸人としては複数のエージェントとパートナーシップを結べることが大きなメリットであり、もし”吉本としかエージェント契約ができない”という意味での“専属”であれば、芸人にとってのメリットはそこまで大きくないし、結局何も変わらないかもしれない。この”専属”という言葉が大きな落とし穴になりそうな気がします」(同)
『スッキリ』(日本テレビ系)での”加藤の乱”で、吉本興業が導入するに至った芸人の”働き方改革”。改革をしたつもりが、蓋を開けてみればまったくそんなものではなかった……なんてことにならなければいいのだが。加藤の乱が無駄じゃなかったと祈るばかりだ。
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