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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.543

『カメ止め』に続く新風が映画界に吹き始めた!! 銭湯が舞台の殺人サスペンス『メランコリック』

経営難にあえぐ銭湯の裏稼業

営業終了後の銭湯は、殺人&死体処理の場所として貸し出されていた。秘密を知った和彦(皆川暢二)は協力せざるを得ない。

 都会のオアシスである銭湯だが、この店にはもうひとつ別の顔があった。通常営業だけでは経営が苦しいらしく、営業終了後にはワケありな人向けに殺人&遺体処理の場所として貸し出されていた。解体された死体はボイラーで焼却しているらしい。この秘密を知ってしまった和彦は、解体作業後の血で染まった洗い場を朝までに清掃するという特殊残業を請け負うことになる。残業代は思いのほか高額だった。誰も知らない危険な闇の仕事に関わるようになり、和彦はこれまで感じたことのない高揚感、充足感を感じるようになっていく。

 2018年の邦画界の話題を独占した上田慎一郎監督の『カメラを止めるな!』(17)と本作はいくつかの共通点がある。『カメ止め』はイタリアのウディネ・ファーイースト映画祭で観客賞第2位に選ばれたことで注目を集めたが、『メランコリック』は今年の同映画祭に出品され、新人監督賞を受賞している。

 製作費は『カメ止め』『メランコリック』、どちらも300万円。『カメ止め』はキャストが製作費を分担し、『メランコリック』は主演の皆川が借金や深夜バイトすることで捻出した。従来、俳優は出演作のオファーが来るのを待つだけの受け身の仕事だと思われてきたが、いまどきの俳優は宣伝活動だけでなく、映画製作にも積極的に関わるという新しい流れが邦画インディーズ界に生まれつつある。これからの俳優は演技力だけでなく、才能ある監督に働きかけ、企画をプロデュースする能力も求められているようだ。新しい時代を迎えていることを感じさせる。

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