トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 杏『偽装不倫』で見せた演技の幅
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

杏は“正統派ヒロイン”だけじゃない! 復帰ドラマ『偽装不倫』で見せた演技の幅

作品ごとに印象を変える杏の演技

 現在33歳の杏は、ハリウッドでも活躍する俳優・渡辺謙の娘としても有名な二世女優だ。もともと女優ではなく、ファッションモデルとして活躍していた。15歳の時に「non-no」(集英社)の専属モデルとなり、2005年からは海外のプレタポルテ(高級既成服)コレクションでも活躍。ルイ・ヴィトンなどのファッションショーに多数出演した。

 そして、07年に黒澤明の映画をリブートしたSPドラマ『天国と地獄』(テレビ朝日系)で女優デビュー。その後、『泣かないと決めた日』や『名前をなくした女神』(ともにフジテレビ系)など数々のドラマに出演する。そして13年のNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』のヒロイン・め以子を演じたことで、その人気は全国区のものとなる。本作で夫役を演じた東出昌大と14年に結婚し、現在は三児の母だ。

『ごちそうさん』以降は、明るく快活なお嬢さんキャラというイメージが定着し、池井戸潤の小説をドラマ化した『花咲舞がは黙ってない』(日本テレビ系)のような負けん気の強い正統派ヒロインばかりを演じている印象があるが、実は、役によって印象を大きく変化させていく女優だ。

 例えば、『泣かないと決めた日』で演じた帰国子女のお嬢様・立花万里香は一見、清楚な美人だったが、物語が進むにつれて病んだ面を暴走させていく狂った役柄だった。

 人気アニメをリブートした『妖怪人間ベム』(日本テレビ系)では、怪物に変身する浮世離れしたベラを演じ、アニメのイメージも踏まえた上で、杏ならではのベラを見せてくれた。

 古沢良太が脚本を担当した『デート~恋とはどんなものかしら~』(フジテレビ系)で演じた藪下依子は頭の切れる国家公務員で、人の心の機微が理解できない機械のような女性だったが、ニートの青年と交際することで少しずつ変わっていく。そんな依子をコミカルに演じた杏は、コメディエンヌとしての才能を証明した。

 今回の『偽装不倫』の鐘子は、派遣社員で婚活に疲弊している32歳の女性。実際の杏は三児の母だが、見事に30代独身女性の不安を体現している。

 今後は母親役を演じる機会も増えていくことだろう。作品ごとに印象を変える杏の演技の幅は、どんどん広がっていくはずだ。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2019/07/25 14:00
12
ページ上部へ戻る

配給映画