吉本興業に行政案件を担う資格はあるか 大阪万博、国連、教育事業との関わり
宮迫博之と田村亮が謝罪会見で暴露した吉本興業による隠ぺい工作とパワハラ体質、そして二人の会見を受けて開かれた岡本昭彦社長による釈明会見は、吉本興業の“会社としてのイメージ”を地に落とした。
自分の非を詫びたいと望むタレントを黙らせたり、「連帯責任でクビ」と恫喝するようなトップが率いる企業だということが明らかになり、説明を求められてもしどろもどろの会見しか出来ない。組織としての悪い意味での“いい加減さ”が露呈したことで、吉本興業そのものの信用性が揺らいでいる。
吉本興業に所属する芸人たちも番組やSNSを通じて続々と会社に対する怒りのコメントを発しており、吉本興業側は岡本社長および大崎洋会長の退任の可能性も含め、さらなる対応を迫られるだろう。
一方で、吉本興業の問題は、単なるいち芸能プロダクションの「ブラック労働」問題として済ませていいものではない。
7月21日放送『サンデー・ジャポン』(TBS系)で杉村太蔵は、吉本興業がここ最近押し進めている仕事について、このような指摘をした。
<僕がね、問題だと思いますのは、いま、吉本興業株式会社は行政案件にぐいぐい食い込んでいます。特に僕が印象に残っているのは2025年の大阪万博ですよ。これ、民間企業体連合体のトップになっている。こんなパワハラ企業がですね、この企業連合体のトップ。本当にこれでいいのかという議論が当然これから出てくる>
実際、吉本興業はここ数年で公的機関とのつながりを強めている。杉村が指摘した大阪万博では、誘致の段階から深く関わり、誘致委員会のアンバサダーをダウンタウンが務めるなどしてきた。
また、2018年からは、吉本興業を代表とする企業連合が万博記念公園の指定管理者となっている。今後、2025年が近づくにつれ、その結び付きはより強くなっていくだろう。
吉本興業と国連、教育事業への進出も
吉本興業による公的機関との仕事は大阪府だけではない。国連との仕事もある。吉本興業は国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の広報活動に関わってきた。
SDGsとは、2030年までに目指す国際社会共通の17の目標を掲げたもので、貧困や飢餓をなくす、ジェンダー平等の実現、環境保護といった目標があげられている。
吉本は、そのSDGsを周知すべく、イベントに芸人が参加して盛り上げたり、YouTubeなどにアップされるPR動画に所属タレントを出演させるなどのかたちで関わっている。
そんな吉本興業の活動のなかでも、特に大きな疑問が噴出しているのが「教育事業」への関わりだ。
今年4月、吉本興業はNTTグループと組んで、教育関連のコンテンツを配信するプラットフォーム「ラフ・アンド・ピース・マザー」の立ち上げを発表した。
この教育プラットフォームは、動画コンテンツ、ゲーム、VR・ARアプリ、アトラクション施設などを通じ、子どもたちが生活の知恵や、様々な角度で物事を捉える力や、ロジカルな思考能力を身につけるサポートをするプロジェクトであると説明されている。
この事業には官民ファンド・クールジャパン機構の出資も決まっており、最大100億円もの巨額がつぎこまれる可能性もあるという。
吉本興業と安倍政権の蜜月
こういった行政案件への食い込みを可能にしている背景には、吉本興業と安倍政権の密接なつながりがあることは疑いようもない。
NMB48の吉田朱里は大阪G20におけるロゴマークを決める選考会のメンバーに選ばれていたし、大崎会長はいま現在も、沖縄の米軍施設・区域が返還された後の跡地利用を協議する有識者懇談会の委員に選任されている。
安倍政権と吉本興業のつながりはどんどん露骨になっている。統一地方選直前の4月に安倍首相が吉本新喜劇の舞台に上がり、その後、6月に吉本所属のタレントたちが首相官邸を表敬訪問したことは記憶に新しい。
安倍政権は吉本芸人のタレントパワーを人気取りに利用し、吉本興業は安倍政権との密接な関係で行政案件に食い込んでいく──吉本興業のブラック体質とともに、この関係性についても見直しが求められてしかるべきなのではないだろうか。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事