上皇陛下の半生がまるわかり! 子供向け学習マンガで描かれる「平成の天皇」
#皇室 #平成の天皇 #上皇陛下
平成から令和の時代に変わっておよそ3ヶ月。「令和」という元号にもすっかり馴れて来た感があるが、こと天皇に関しては、先の皇太子を「天皇陛下」と呼ぶことに、まだ違和感を感じるという人が、皇室記者の人の中にも少なくないとか。それは言い換えれば、いまの上皇陛下が、平成時代の天皇陛下として、いかに敬愛されていたかという証でもある。
そんな平成時代の天皇陛下の半生を、なんと学習マンガの形でまとめた本が、先頃発売された。そのタイトルも「平成の天皇」。小学館の学習伝記まんがシリーズ「学習まんが人物館」のうち、現在存命中の人物を扱った特別枠「学習まんがスペシャル」の1冊である。同シリーズには、ほかに松井秀喜、羽生善治、ポケモンの生みの親である田尻智などが登場しているが、天皇陛下を取りあげるというのは際立って大胆な試みだ。なお、「昭和天皇」といった呼び名は崩御された後の諡(おくりな)であり、現在在位中の天皇は「今上天皇」と呼ぶことになっているが、上皇陛下は、在位中でもなく崩御されてもいないため、平成の天皇時代も含めた呼称がまだ定まっていないことから、「平成の天皇」というタイトルになったのだと思われる。
マンガは、上皇陛下が皇太子として生まれてからの幼少時代、父・昭和天皇と新聞記事について話し合って社会への関心を育てたり、美智子さまへの電話でのプロポーズからご成婚、天皇陛下となり、自然災害の折には避難所で膝をついて被災者と話したり、と国民のためを思われ続けたこと。そして、退位するまでを描いており、その半生において、いかに真摯に平和のためと国民のためを思い、尽くしてきたかが改めて分かる内容となっている。
監修は、日本近現代皇室史が専門の歴史学者で、皇室報道でもお馴染みの小田部雄次・静岡福祉大学名誉教授。小田部教授は、「平成の皇室」の監修にあたって気をつけたことについて、次のように話す。
「小学生だけでなく、大人にも象徴天皇が何であるのか、平成の天皇がどんな人物であったのかを描くことは、難しい課題でした。学問的な定説はまだ確立していないので、明らかになった事実をひとつひとつ踏まえながら、その歴史を描く必要がありました」
シナリオはノンフィクションライターで児童文学作家の祓川学氏が担当したので、小田部教授が担当したのは事実の考証のみだったが、シナリオの筋書きが実際にあったかどうかの検証は、注意深く行なわれた。当初のシナリオで幼少時代の皇太子(現・上皇)が、少年たちをリードして馬跳びをしていたシーンがあったが、皇太子は幼少時代は気弱な性格で、仲間をリードするほうではなかったのではないかと考えられ、また馬跳びをしたという確たる証拠もなかったことから、こちらは実際に皇太子がしたという資料が存在する相撲遊びに、小田部氏の助言で変更したという。
「マンガといっても荒唐無稽なことを書けるわけではなく、しっかりした事実の確認と時代考証が求められます。とはいえ、まったく資料がない事柄もあり、その場合は、『ありうべき嘘は許される』、『真実は細部に宿る』というふたつの方針のバランスを取ることが大切になりました。また、平成の天皇といっても、幼少時代から一貫した人格や思想があったわけではありません。このマンガは、その平成の天皇が平和を愛する思想を育てるにいたるまでの、成長の物語でもあるわけです」
このマンガは、まず子供向けの新聞である読売KODOMO新聞に連載されたのち、本書にまとめられた。今年5月の平成から令和への改元にあたって、「天皇」「退位」関連の本が多数出されたが、児童書に関しては、ほぼこの本だけ。この本はその意味でも重要なのだが、それだけではなく、子供に限らず大人が読んでも学ぶところが多い。令和となったいま改めて平成を振り返るためにも、読みやすく分かりやすい本書は格好の1冊である。
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