『脱力タイムズ』から考える、”番宣”俳優の正しい取り扱い方
#佐藤健 #安藤サクラ #テレビ日記 #中村倫也
佐藤健「いま一番おもしろい番組です、これが。テレビの1位です」
だからといって、俳優はいつも番宣を目的にバラエティ番組に出るわけではない。たとえば、7日放送の『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京系)には、安藤サクラが代打アシスタントとして出演していた。特に番宣とかはなく、単に番組のファンだからという理由で。ポーカーフェイスでババ抜きをしたり、お面をつけて運動器具にぶら下がったりしていた。
あるいは、8日の『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)に出ていた佐藤健。彼もまた、番組のファンだからという理由だけで出演していた。冒頭の千鳥とのトークから、佐藤の番組愛は止まらない。
「いま一番おもしろい番組です、これが。テレビの1位です」
この日の企画は「ガマンめし」。普段当たり前に食べているファストフードも、極限まで我慢して食べるとめちゃくちゃウマいのではないか。そんな想定のもと、食べたい気持ちを抑える過程や、ようやく食べたときの喜び、その一部始終をお送りする企画である。
今回我慢するのは、すき家のキムチ豚生姜焼き丼。このメニューが大好きで週5で食べていた時期もあるという佐藤は、前日の昼から何も食べずに収録に臨んでいた。カメラが回るずっと前から、すでに佐藤の我慢は始まっていたのである。
空腹の佐藤を、次々と試練が襲う。ビニール袋に閉じ込めた厨房の空気を店外で吸引するなどし、丼への気持ちを高めていく。高まったところで、あえて店に入らず30分ほど散歩する。そうしてようやく店内へ。が、まだ食べない。まずは、キムチ豚生姜焼き丼のスーパースロー映像を見る。そして、いよいよ本物を目にする時間。目の前に運ばれたキムチ豚生姜焼き丼を見た佐藤はつぶやく。
「完璧な料理だ……」
嗅覚に続き、視覚も刺激された佐藤。しかし、その後も我慢は続く。体格のいいスタッフが丼をかっ込む様子を見る。空のどんぶりと箸を手に持ち、エアーで食べる。改めて一度ロケバスに戻り、20分ほどドライブする。紅生姜を3ミリだけ食べる、大勢のスタッフがキムチ豚生姜焼き丼を食べる様子をただただ見る。そんな苦行が延々と続くロケに、「想像以上にしんどいっすね……」と佐藤からも弱音が漏れる。
そうやって我慢に我慢を重ねた末に、ようやく注文。キムチ豚生姜焼き丼をまっすぐ 見つめ、「いただきます」と手を合わせる佐藤。ロケ開始からすでに2時間。食事を抜いてからは、もはや30時間。極限まで我慢して口にした味は、果たして。
「おいしい~」
口に含んだ瞬間に思わず笑みがこぼれた佐藤から出てきた感想は、積み重ねた時間の長さや我慢の過程の紆余曲折さとは裏腹に、とても短くてプリミティブだった。そんなうれしそうな佐藤を見ているこちらも、なぜだか笑ってしまうから不思議だ。
番宣のために出演したバラエティ番組でつまらなそうにしている俳優は、もはやほとんどいない。多くはトークやリアクションなどで場を盛り上げている。そんな俳優についてバカリズムは、「性格悪いって見なすようにしてる」とねたみ目線でネタにした。しかし、今回の佐藤に至っては、もはや番宣ですらない。動機は単純な番組愛である。
どうやら、ねたみを差し挟む最後の余地すらふさがれてしまったようだ。
(文=飲用てれび<http://inyou.hatenablog.com/>)
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