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日刊サイゾー トップ > その他 > ウーマン・ウェジー  > 東大生集団わいせつ事件の犯人たち、執行猶予のその後
【wezzy】

東大生集団わいせつ事件の犯人たち、執行猶予のその後

 2016年5月、東京大学の学生と院生ら5人が、東京・豊島区のマンション一室で女子大学生Aさんの体を無理やり触るなどして、強制わいせつや暴行などの罪で逮捕された。この『東大わいせつ事件』では学部生2名と院生1名が起訴され、同年秋、東京地裁でいずれも執行猶予付き有罪判決を受けている。彼らは女性との出会いや性行為を目的としたインカレサークル『東大誕生日研究会』を運営していた仲間であった。

 事件は池袋にある居酒屋での飲み会ののち、巣鴨のマンションに移動してから起こった。逮捕当時、工学部システム創成学科の4年生だった松見謙佑は、現場となった部屋でAさんの衣服を剥ぎ取り全裸にしたうえ、隠部にドライヤーの熱風を当てる、肛門を箸でつつくなどの行為や、その上にまたがり接吻する、ラーメンを食べて熱い汁をAさんの胸元に落とすなどの暴行を加えた。判決は懲役2年、執行猶予4年。

 同じく当時工学部システム創成学科の4年生で、この池袋のマンションの居住者だった河本泰知は、飲み会には参加していなかったが、二次会のために部屋を仲間たちに提供することを了承し、居室では松見らの行為によって抵抗を見せるAさんの臀部を触るなどした。判決は懲役1年6月、執行猶予3年。

 飲み会にAさんを誘った張本人である松本昂樹は、工学部システム創成学科を卒業後、同大学院へ進学し、当時修士1年だった。かつてAさんと肉体関係を持ったことがあり、Aさんは一時期、松本に好意を寄せていた。遅れて飲み会に到着した松本は率先して彼女に酒を飲ませ、胸を触り、ブラジャーのホックを外すなどのハメを外した行為を続け、二次会に行かず帰ろうとするAさんを引き止め、巣鴨のマンションへ連れて行った。そして松見の行為を受けて嫌がるAさんに対して背中を平手打ちするなどした。判決は懲役1年10月、執行猶予3年。

「仲間の間で女性をモノ、性の対象として見て人格を蔑んでる考え方が根本的にあったと思う。大学に入学してサークルなどで他大学の子と接して、彼女らはアタマが悪いからとか、バカにして、いやらしい目でばっか見るようになり……という、男たちの中でそういう考え方、形成されてきたように思います」

 作家・姫野カオルコ氏は本事件に着想を得て昨年『彼女は頭が悪いから』(文藝春秋)を上梓したが、タイトルには公判で実際に3人のうちの1人が発言した言葉が使われている。

 彼らについて筆者は2016年当時に取材を行い『新潮45』(新潮社)にまとめたが、その後も彼らの動向を追い続けてきた。彼らは公判で反省の弁を述べていたが、彼らの思う“反省”とは何か、それは行動として現れるだろうと考えていたからだ。

 公判に付された後、退学処分となった3人のうち、ひとりは海外に飛び、ふたりは東京でエンジニアやコンサルとして活躍してきた。不起訴処分となったうちのひとりは大学院を中退したのち、名前を変え、所属するスタートアップ企業の若きエンジニアとしてインタビューを受けてもいた。中退した理由について語るくだりで、事件のことは一切、出てこなかった。

 報道により社会的制裁を受けたともいえる彼らにとって、名前を変え、過去を隠すことは処世術の一つであろう。彼らの人生はこれからも続く。だが、振る舞いが以前と全く変わらないという声が聞こえてくる。これは非常に残念なことだ。

 

未だに「女性をどれだけ落としたか、成果を報告しあう」
 『彼女は頭が悪いから』の主人公である男子東大生・つばさのモデルとなった男は、執行猶予判決を受けた3人のうちのひとりだ。現在は社会内で罪を償う日々を送っているはずなので、山田と仮名にする。

 山田は小説にあるように被害者を飲み会に誘い出し、過去に肉体関係があったという情報を仲間たちに共有した上、率先して胸を触る、背中を叩くなどして「彼女をいじめてもよい」という空気を作り上げた張本人であった。「女性観というのが、下心で近づいてきてるんじゃないか、とか、そういう女性観、反省しないといけない」……公判ではそんなふうに反省を述べていた彼だが、しかし「全く反省しているとは思えない」と、ある男性が訴える。

 執行猶予判決を受けたのち、世話になっていた先輩が経営する会社に入社し、コンサルとして出向していた山田。その男性・B氏は、山田とその出向先で出会い、同じプロジェクトで仕事を共にしてきた。

「プロジェクトでの関係が濃かったので関係が構築されて友人として付き合うようになりましたが、当時は下の名前に違う漢字があてられていたので、全く気づきませんでした。仕事における処理能力は高かったです。難しい問題を解決する術を彼は持っているし、生み出すことができます。
 ですが、彼はのちにその会社で女性と問題を起こし、会社を離れることになった。そのときに『いつか仕事でお世話になるかも』と前置きされ、事件のことを告白されました」

 仕事でもプライベートでも親密だった山田を助ける意味合いで、B氏は彼を自身の経営していた会社に引き入れた。

「友人としての付き合いも続いていましたが、引っかかることはいくつかありました。彼は女性だけでなく男性のことも、自分より頭が悪い人を見下していた。『XXさんって本当に頭が悪いよね』『XXさんは頭が悪いから』は口癖のように言っていましたね。
 女性にモテているという発言も多々ありました。『デートに行く金がキャッシュフローを上回った』と、給与を多く支払うように言ってきたりもしますし、仲の良い友人らと風俗の話になった時『こんなところにお金出さなくても普通に抱けるじゃん』と……。
 事件を起こした仲間とも、彼に紹介されて会ったことがありますが、会うなり『ナンパ行かない?』と言われて面食らいました。当時の5人でSlackのプライベートなプロジェクトを作っていて、女性をどれだけ落としたか、成果を報告しあっていましたよ」

 とはいえ、事件のことを打ち明けてくれた山田との友情を信じていたB氏は、こういった言動には目をつぶりながら、プライベートでも仕事でも、交流を続けていた。しかし今年に入り、山田がB氏の会社で重大なミスを犯す。

「実際、会社に大きな損害を与えるミスであり、いまもその余波が続いている状況です。彼個人に対して損害賠償をするというのは回収できないことはわかる。ただ謝罪があってしかるべきであろう、と。そう伝えたとこら、『あくまでそうかもしれないけど、俺は商流にいないから、お前が責任を負うべきだろう』、と開き直られ……。手続き上はもちろんそうです。ですが人として、ミスをしたら謝ることもできないのだろうか? と、とても残念に思います」

 

 結局、謝罪することなくB氏の会社を離れた彼は、名字を変え、この春に大企業に採用された。現在、あるウェブサービスのマーケティングを担当している。過去の事件のことは完全に経歴から隠し、採用を勝ち取った。

「色々な経緯を踏まえて私なりに感じたことは、彼は人として歪んでいるとは思います。自分が誤ったことをしてしまった場合、謝るべきだと思うんですね。それができない。それも、規模の大きさにかかわらずできていないと感じました。過去の事件のことを見ても、彼は本心として謝っていないと思うんです。
 自分の学歴が高いとか自分はモテているとか、そういう話題が多く、だからこそなのか、自分より“下”だと認識している相手には敬意を表さない、謝らない。僕のことも結局、下に見て、利用したのだろうと思います」

 他方で、東大に入る前の山田を知る人物・C氏は、勉強漬けの毎日が彼を変えたと振り返る。

「小さい頃、九州で暮らしていた彼はもともと純粋な田舎の少年だったと記憶しています。しかし両親、特に母親から厳しく勉強に関してやらされていたようです。母親には一切逆らえず、泣きながら従っていました。妹がいるのですが、彼女もまた勉強漬けでした。彼はいつからか、自分より成績の悪い人間を徹底的に馬鹿にするようになり、学校では嫌われていきました。東大には一浪で入ったそうです。『現役で早稲田受かってたけど蹴って良かった』と自慢していました」

 山田は現在、ツイッターで自身のキャリアを明かしながら、仕事論を日々、つぶやいている。そこでもやはり、“頭の悪い人間”を見下す発言が多々みられる。

「教養のない人間が嫌い」
「親の顔が見てみたい、育ちが悪すぎる」
「知識武装は何よりも強い。無知は罪である。社会人になって勉強をしない人間はたかがしれている」

 無知は罪。そう世界に向かって綴る彼は、かつて自分が犯した罪をどう受け止めているのだろうか。そして、B氏に対して今どう思うのか。執行猶予は今年の秋に明ける。

最終更新:2019/07/07 07:15
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