向理来主演の新感覚BL映画『最短距離は回りくどくて、』
#BL #パンドラ映画館
悠斗はホスト、青山はホームレスに……
物語は中盤から一気にハード化する。高校卒業後、悠斗はホストとして、夜の世界で働いていた。ところが、金銭トラブルから借金地獄へと陥り、悠斗は男娼として体を売ることを余儀なくされる。男を相手にうぶなリアクションを見せる悠斗に、男性客はみんな大喜び。「テクニックだけではない、何か特別なものを持っている」と噂になり、売れっ子男娼となっていく。裏社会で隠れた才能を発揮する悠斗。一方、教師をクビになった青山はホームレスとなっていた。まったく異なる世界で生きる悠斗と青山は、運命に導かれるように意外な形で再会を果たすことになる。
ハードボイルドものを得意とする山内監督だけに、本作も裏社会を舞台にしたノワール調の作品となっている。表社会では生きていけない男たちの孤独感や愛憎が交差し、物語をスリリングに盛り上げていく。女性層を意識して撮影されていることもあり、男同士のベッドシーンも美しく撮られているのが本作の特徴だろう。どこを責められると気持ちいいのか、男同士はお互いによく分かっており、攻守を交代しながら、どこまでも深くグイグイと責め込んでいく。アブノーマルな世界だが、同時に同性愛の奥深さも感じさせる。
本作の面白さはそれだけではない。上映時間70分の中、ラストの15分は〈noir〉と〈blanc〉の2種類が用意されており、上映回によってエンディングが異なるという仕掛けになっている。BLファンに2度楽しんでもらおうという狙いだ。上映回によって違うバージョンを上映するという手法は、2.5次元系の舞台ではすでに浸透しているもの。どのバージョンも観たいというファンの心理をくすぐるこの手法、配信ドラマや一般映画でも将来的には流行するのでないだろうか。新しいアイデアを積極的に取り入れるところも、ピンク映画界でサバイバルを続けるオーピーピクチャーズならではのアグレッシブさを感じさせる。
試写会場に来ていた山内監督に話を聞く機会があったので、コメントを紹介したい。
山内大輔「普段、ピンク映画というジャンルの中で撮っていると、どうしてもルーティンに陥りがちなので、新しいジャンルに挑戦できて面白かったですよ。僕はBLものはおろか、ゲイ映画も撮ったことはなかったので、BLに詳しいAV女優のかさいあみさんに監修として入ってもらいました。BLの世界はいろんな分野に細分化されており、また男女のように受け手と攻め手が固定化されておらず、入れ替わることもあるなど、いろいろ教わりました。ラストが2つあるのも、かさいさんからの発案で、『面白い、やろう』ということになり、当初用意していた〈noir〉に急遽〈blanc〉を加えたんです。キャストに対しては、腰の引けたものにはしたくないという気持ちで演出しました。向くんは経験豊富でしたが、他は男を相手にするのは初絡みという男優ばかりだったので『本当に男が好きだという想いでやってくれ』とハッパを掛けながらの撮影でした。いつもは女優ばかりの現場ですが、男ばかりの現場というのも体育会系っぽくて楽しかったですよ(笑)」
腐女子のメッカと呼ばれる池袋での2週間限定上映。いつか、新しい時代の発火点となった作品として、記憶されることになるかもしれない。いつだって、新しい時代を生み出していくのは、マイノリティー側なのだから。
(文=長野辰次)
『最短距離は回りくどくて、』
監督・脚本/山内大輔 監修/かさいあみ
出演/向理来、塩口量平、服部武雄、初瀬川博人、おみのじんや、結城駿、竹本泰志、山本宗介、可児正光、森羅万象、長谷川千紗、里見瑤子
配給/OP PICTURES R15+ 7月5日(金)より池袋シネマ・ロサにて2週間限定上映
(c)OP PICTURES
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