『カニバ』佐川一政が再会を願った女優・里見瑤子との20年
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パリ人肉事件を起こした佐川一政の近況を追ったドキュメンタリー映画『カニバ/パリ人肉事件38年目の真実』が7月12日(金)より劇場公開される。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門審査員特別賞を受賞したものの、衝撃的な内容から国内の配給会社はどこも手を出さず、日刊サイゾーの兄弟サイト「TOCANA」が配給することになった、いわく付きの問題作だ。
全編、ほぼ佐川一政と脳梗塞で倒れた兄の介護に努める弟・純さんしか登場しない静謐さを極めた作品だが、ピンク映画界で長く活躍する女優・里見瑤子が後半から姿を見せる。寝たきり状態が続く佐川にとっては、まさに神々しさを感じさせる女神のような存在となっている。実は里見にとって佐川と映像作品で共演するのは、これが2度目だった。20年間にわたる佐川との不思議な関わりを、里見に語ってもらった。
<佐川純さんへのインタビューはこちらから>
里見は、ピンク映画界では、出演作140本を超えるベテラン女優として知られている。高取英が演出する『聖ミカエラ学園漂流記』などの舞台にも出演。また、今春公開されたドキュメンタリー映画『新宿タイガー』では、新宿きっての名物男・新宿タイガーから「あなたは女神だ、天女だ」と酒の席で称賛される様子が映し出されていた。女優・里見瑤子は、マイノリティー界の人々を魅了するものを持っているようだ。
「大変な映画好きで有名な新宿タイガーさんにあんなふうに持ち上げられると、『女優って、すごい職業なんだな。観た人を元気づけられる、素晴らしい仕事なんだな』と思えてきますよね。あくまでも私個人じゃなくて、女優という職業が──ですが(笑)。マイナーな世界を扱うことなしに、ピンク映画はありえないでしょうね。大学生だった私がピンク映画に出ることになったのは、小林悟監督との出会いでした。小林監督が撮った映画は卑猥だという理由で警察官にスクリーンを破かれ、裁判騒ぎになり、後に“ピンク映画”と呼ばれるようなったんです。その話を知って、『ピンク映画ってかっこいいな、小林監督と一緒に仕事したいな』 と思ったんです。それからピンク映画に140本ほど出ていますが、ピンク映画界では200~300本出ている人も少なくないので、私なんかまだまだ(笑)。予算はないけど、スタッフとキャストが知恵と汗を絞って撮り上げるのがピンク映画。それが楽しいんです」
問題作『カニバ』を撮ったのは、ハーバード大学感覚民族誌学 研究所に所属するフランス人学者であり、映画作家でもあるヴェレナ・パラヴェルと、同研究所に勤めるディレクターのルーシァン・キャステーヌ=テイラーの2人。“ピンク四天王”として活躍した佐藤寿保監督の作品を観て、ピンク映画のアバンギャルドさにハマり、佐藤監督が撮った日仏合作映画『眼球の夢』(16)のプロデュースも2人は手掛けている。
「ヴェレナとルーシァンはピンク映画に興味があったようですが、カニバリズムについての作品も考えていて、世界中のカニバリストの中で唯一会うことができるのは佐川一政さんだけだったことから、日本に取材に来たようです。でも、佐川さんは脳梗塞で倒れてからは体調がすぐれず、口数も少ない状況。それでヴェレナたちが佐川さんに『何かしたいことは?』と尋ねたところ、私と会いたいと話したそうなんです。そのことを佐藤監督から聞いて、まずはヴェレナたちに会って、佐川さんとの出会いを話すことにしたんです」
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