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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 官僚制の闇に迫る危険なサスペンス
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.537

安倍政権の長期化は「内閣情報調査室」のおかげ!? 官僚制の闇に迫る危険なサスペンス『新聞記者』

安倍政権と内調の蜜月

元上司が自殺に追い詰められたことから、内閣情報調査室に勤める杉原(松坂桃李)は自分の仕事に疑問を感じることに。

 本作が描いているように内調が世論を操作しているのなら、安倍政権が多くの問題を抱えながらも、のらりくらりと長期政権を維持できているのは内調のおかげだということになる。安倍政権が長期化する一方、「世界の報道の自由度ランキング」はG7(先進7カ国)中最下位が日本の定位置となってしまった。報道の自由度が低いほうが、政権を安定させるには都合がいいらしい。官僚たちだけでなく、官僚や官邸の不正をチェックするはずのマスコミや選挙権を持つ国民も、同調圧力によって盲目の羊化が進みつつあるようだ。クライマックスで明かされる羊をめぐる謎かけの答えには、ゾッとさせられる。

 弾けるような笑顔を『サニー 永遠の仲間たち』や『怪しい彼女』で見せたシム・ウンギョンだが、本作ではずっと苦虫を噛み潰したような固い表情のままだ。『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)ではゾンビ化する女性感染者として1シーンだけ出演したが、本作もつらそうに映る。同調圧力に弱い日本社会の縮図の中、役に成り切って見せる彼女にとって感情を爆発させることのない記者の役は、ゾンビ役と同じくらいしんどい体験だったに違いない。

(文=長野辰次)

『新聞記者』

原案/望月衣塑子、河村光庸 脚本/詩森ろば、高石明彦、藤井道人 監督/藤井道人 音楽/岩代太郎

出演/シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、岡山天音、郭智博、長田成哉、宮野陽名、高橋努、西田尚美、高橋和也、北村有起哉、田中哲司

配給/スターサンズ、イオンエンターテイメント 6月28日(金)より新宿ピカデリー、イオンシネマほか全国ロードショー

(c)2019「新聞記者」フィルムパートナーズ

https://shimbunkisha.jp

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最終更新:2019/06/28 21:00
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