投げかけられた問いに、私たちはどんな答えが出せるだろう――ドラマ『パーフェクトワールド』最終話
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オー・ヘンリーの小説に『賢者の贈り物』という短編作品がある。
ある若い夫婦が、クリスマスに相手へのプレゼントを渡そうと考える。妻は、夫が大切にしている懐中時計につける鎖を買う。ただし、そのお金を捻出するために、自分の髪を切って売ってしまう。一方、夫は、妻がその美しい髪をとかすための、櫛を買う。そのお金を捻出するため、懐中時計を売ってしまうというものだ。
皮肉な結末にハッとさせられる部分もあるが、それでも、読んでいてお互いの愛情を感じ、温かい気持ちになる名作だ。
ドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)を見ていて、しばしばこの作品を思い出した。愛する人のために、自分の持っているものを差し出して、違う何かを手に入れる。足りないものと溢れ出るもの。それが何かを考えさせられるのだ。
3カ月続いた、樹(松坂桃李)とつぐみ(山本美月)の物語もいよいよ最終回。一体どんな結末を見せてくれるのだろうか。
父の気持ちが変化していく
樹と会うことを拒み続けていたつぐみの父・元久(松重豊)だったが、ようやく樹と二人きりで会うことを受け入れ、公園で話をする。つぐみと生活していく上での困難は承知の上、少しでもできることをしてあげたいと話す樹と、それでも結婚は認められないという元久。二人の話は平行線のままだ。
その時、元久が心臓の発作を起こし、倒れてしまう。不自由な体ながら、救急車を呼び、薬を飲ませる樹。今できる全てのことを行い、元久を助けようとする。元久は病院に運ばれ、一命を取りとめた。
翌日、元久は心筋梗塞を起こし、緊急手術となる。集まった家族の中で、妹のしおり(岡崎紗絵)は、樹とつぐみを責める。
「お父さんが死んだら、お姉ちゃんたちのせい」そう言うしおりをなだめたのは、幼馴染みの是枝(瀬戸康史)だった。
樹について、「あの体になって失ったものはあるだろうけれど、あの体になったからこそ得たものも確実にある」是枝はそう話す。
体が不自由になったからこそ得たもの。それは何だろう?
人の痛みがわかる優しさ、困難に立ち向かう強さ、愛する人と巡り合うことの喜び……そんなものは、普通の健常者より、強く持っているのかもしれない。幸せの基準は一つじゃない。確かに、足りないものを認識することによって、気づく幸せもあるだろう。
手術は成功し、元久はリハビリに取り組むことになる。そこで初めて、車椅子の生活を余儀なくされるのだ。そんなリハビリのつらさを一番良く分かっていたのは樹だった。つぐみを介して、メンタル面でのケアなどの助言をするのだった。
自身で車椅子生活を経験し、また、つぐみのことを支えている樹を見て、元久の気持ちは徐々に変わっていく。退院した元久は樹に会いに行き、「弱いのは自分の方だ」と頭を下げる。そして、結婚を認める。
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