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日刊サイゾー トップ > その他 > ウーマン・ウェジー  > BTS(防弾少年団)の“兵役免除”議論が紛糾
【wezzy】

BTS(防弾少年団)の“兵役免除”議論が紛糾 ファンは「軍隊に行くべき」

 BTS(防弾少年団)を表紙に起用した「CanCam」(小学館)2019年8月号が、発売前から異例の売上を記録しているという。

 今月22日発売予定の「CanCam」では、表紙の他にもワールドツアーの合間を縫ってロサンゼルスで撮影された写真や、4000字におよぶBTSメンバーへのインタビューも掲載されており、日本はもとより海外からも大量の注文が入ったため急きょ増刷が決まったという。

 BTSは7月3日に日本シングル「Lights/Boy With Luv」をリリース。同月6日と7日に大阪のヤンマースタジアム長居で、同月13日と14日に静岡のエコパスタジアムで来日公演が予定されている。

BTSが7人揃って活動できる時間はあと少し
 精力的な活動を続けるBTSだが、ARMY(BTSファンの総称)のみならず、韓国社会をも揺るがす議論が起こっている。

 K-POPの男性アイドルには必ずついてまわる「兵役」の問題である。

 デビュー6周年を迎え、BTSのメンバーにも着々とそのタイムリミットが近づきつつある。これまでなら兵役は30歳まで延期できたのだが、昨年10月からは28歳以上の兵役延期に制限がかかるようになった。これにより来年28歳になる最年長のJIN は2020年に入隊することになると見られている。

 また、兵役前の25歳以上の男性の出国にも制限がかかるようになったため、国外での活動に支障をきたす可能性が出てきた。

 1回につき6カ月以内、2年の範囲内で原則5回まで国外渡航の許可を得ることができるが、ライブやイベントのため頻繁に海外を行き来するK-POPアイドルにとって入隊前のこの制限はかなり厳しい障害になると言われている。この規定によりBTSではSUGAの来年下半期からの活動に問題が出てくることになる。

BTSは今や地球規模での人気
 BTSの人気はもはや東アジアのみならず、北米、ヨーロッパ、南米など地球規模にまたがっている。

 昨年5月にリリースされたアルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』では米ビルボードの総合アルバムチャート(Billboard 200)で1位を獲得する快挙を達成。その後に発売されたアルバム『LOVE YOURSELF 結 ‘Answer’』、『MAP OF THE SOUL: PERSONA』でも、同様にBillboard 200で1位を獲得している。

 BTSは現在ワールドツアー「LOVE YOURSELF: SPEAK YOURSELF」を行っているが、アメリカ3会場、ブラジル、イギリス、フランス、日本2会場を回るこのツアーの会場はどれも5万人以上の収容人数のスタジアムで行われた。

 特に、9万人以上の収容人数を誇るロサンゼルスのローズボウルスタジアム(東京ドームの収容人数は5万人)での公演は、ライブの行われた2日間で1660万ドルもの収益をあげ、公演会場史上最高記録を達成。テイラー・スウィフト、U2、ビヨンセ、リアーナといった錚々たるアーティストの記録を破ったという。

 BTSはこのツアーを通して60万枚以上のチケットを販売し、これから行われる日本公演もあわせるとチケット収入だけで1000億ウォンを突破するとされている。

 

BTSの兵役免除をめぐる議論
 昨年12月に、現代経済研究院が発表した「BTSの経済的効果」という報告書によると、BTSの年平均国内生産誘発効果は4兆1400億ウォンにもなり、その額は韓国の中堅企業の平均売上である1591億ウォンの26倍にあたるという(2019年6月10日付ニュースサイト「スポーツソウル日本版」より)。

 BTSの韓国社会への貢献は経済効果だけではない。BTSの音楽を通じて、韓国語を学び始めたり、韓国の文化や歴史に興味をもつ外国人は少なくなく、その延長で韓国への旅行者が増えるなど、明確に数値化できないものを含めれば、その影響は計り知れないと見られている。

 そういったことから、国会議員からもK-POPアイドルに関する兵役免除の議論が提起された。

 オリンピックで銅メダル以上を獲得したアスリートや、クラシックの国際コンクールで2位以上の成績をおさめた者など、世界的な活躍を見せる若者には兵役が免除される特例がある。

 しかし、芸能人はこの制度の枠内ではないので、K-POPアイドルで兵役免除となった例はいまだかつてない。

 昨年、ハ・テギョン議員はBTSを例にとりながら、現在の兵役特例は公平性に問題があると指摘した。

 これに対し、キ・チャンス兵務庁長は<国民的共感が得られない場合は困難>としつつも、<現実に適合させることができるように検討してみる>と答えたという(2018年7月26日付ニュースサイト「Kstyle」より)。

BTSのメンバーやARMYが「兵役」について思うこと
 BTSの兵役問題については、これからいよいよ本格的な議論に入っていくのだと思われるが、では、メンバー本人やARMYはこの問題についてどう考えているのだろうか?

 アメリカCBSの番組『サンデー・モーニング』に出演した際、兵役について質問を受けたJINはこのように答えている。

<韓国人として自然なことです。僕たちはいつか(兵役に)呼ばれたら駆け付けて、最善を尽くす準備ができています>(2019年4月26日付ニュースサイト「スポーツソウル日本版」より)。

 

 現段階で本人の口からはこのように言うしかないというのもあるだろうが、実は、ARMYも「兵役に行っておいた方が無難」といった考えをもつ人が多いようだ。

 「ユリイカ」(青土社)2018年11月号に掲載されたライターの巣矢倫理子氏による論文「外を見るファンダム あるARMYのナラティブから」には、韓国在住のARMYに「推しが兵役に行くことについてどう思うか?」という質問をぶつけた結果が書かれているのだが、その回答は意外なものだった。

<兵役に執着せざるをえない韓国の状況を理解する必要があります。アイドルにとって軍隊は、鶏肋(鶏ガラ:役には立たないが捨てるには惜しいもののこと)ではないかと思うのです。兵役を忌避すると、社会で培ってきたすべてのキャリアや評価が崩れて、アイドルとしての好感度を失います>
<男性アイドルだけでなく、男性芸能人はみな軍隊に行きたくないはずです。しかし、芸能人だということを理由に兵役に差別があってはならないと思います。芸能人ではない一般男性も、貴重な二年間を犠牲にするからです>

 この背景には、韓国社会における「兵役」についての考えがある。

 韓国社会において兵役は、男性ならば誰もが経験する通過儀礼であり、その務めを終えることで社会的に成熟した存在として見なされる価値観がある。

 しかし、その一方では、学業や仕事に集中できる若い時期を2年間も奪われる兵役に対し、「無駄な時間」と考える側面も同時に存在するため、その憎しみが女性蔑視につながっていると問題視する声もある。

 そういったことから、兵役に関しては「公平性」が重んじられる。芸能人や官僚などの特権階級にいる人が兵役逃れのようなことを画策し、それが表沙汰になると猛烈なバッシングが起こるが、BTSメンバーに対する兵役免除が本格的に議論されるようになれば、反発する声が起きるのは確実だろう。

 エンタメ系ニュースサイト「WoW!Korea」2019年6月11 日付の記事も、ARMYから<「兵役特例」が議論されることで、メンバーたちが傷つくことが目に見えてくる><今まで韓国の男性が「軍隊」に対する追求してきた盲目的な「公平性」を考えると、議論の過程であらゆる非難が集中することが予想できる>といった声が起きていると伝えている。

 

世界的な成功をおさめるK-POPグループ
 また、「WoW!Korea」の記事では、<一部のファンから騒がしく兵務庁などに問い合わせた場合、他のボーイズグループとの公平性も論争にもなる>といった指摘もあると書かれていた。

 世界的に活躍しているK-POPアイドルはBTSだけではない。

 たとえば、NCT 127は今年5月に発売したアルバム『NCT #127 WE ARE SUPERHUMAN』がBillboard 200で初登場11位にランクインする快挙を成し遂げた。MONSTA Xもアメリカの大手レコード会社・エピックレコードと契約して本格的なアメリカ進出を始めている。他にも、GOT7やStray Kidsなど、アメリカやヨーロッパをツアーで精力的にまわるグループをあげていけばキリがない。

 また、BTSが所属する事務所・Big HitエンターテインメントからBTSの弟分としてデビューしたTXT(TOMORROW X TOGETHER)などは、今年3月のデビュー当初から韓国での活動と同等、もしくはそれ以上にアメリカでの活動を重要視して行っている。今後はそうした活動方針をとるグループも増えてくるのかもしれない。

 こういった状況を勘案すると、海外での活躍を兵役免除の条件にするにしても、どこで線引きをするかが論争になるというのは、もっともな指摘であろう。

 とはいえ、東アジア出身の芸能人でBTSのような規模の世界的成功をおさめたのは稀なケースだ。

 そんな彼らが、せっかく掴んだチャンスにも関わらず、旬な時期で7人揃った完全体での活動ができなくなってしまう損失はあまりにも大きい。

 また、アジア諸国のみならず世界中にK-POP文化が広がった立役者は間違いなくBTSであり、彼らの不在がシーン全体の勢いを停滞させる可能性は大いにある。

 残された時間はもうあまり長くはない。議論の着地点はどこになるのだろうか。

最終更新:2019/06/22 07:15
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