和田彩花がアンジュルム卒業後も「アイドル」を続ける理由とは?
18日に日本武道館にて行われるコンサートをもって、和田彩花がアンジュルムおよびハロー!プロジェクトから卒業する。これをもって、スマイレージ名義時代も含め10年にもおよんだグループの一員としての活動に幕を下ろすことになる。
和田彩花はアンジュルム卒業後も「アイドルを続ける」と明言している。ファンに卒業を告げた2018年4月5日更新のブログのなかで彼女はこのように綴っていた。
<30代になったとき1人でステージで歌って踊っていることが次の目標です。
様々な表現をやっていきたいです。そうなれるよう、20代を過ごそうと考えました。
そして、できればアイドルで居たいのです。
それはアイドルでやることではないのかも?
今からアイドル?
そう言われれば言われるほどアイドルで挑戦してやると思うのです。
「アイドル」というキーワードで外面的に捉えられるのは嫌です。私はそこを超えていきたいし、それを世の中に提示していきたいです>
では、和田彩花が<世の中に提示していきたい>と宣言する「アイドル像」とは、いったいどんなものなのか?
和田彩花「アイドルの在り方の解釈を多様にしたい」
女優の蒼井優と菊池亜希子がダブル編集長を務めたことでも話題の『アンジュルムック』(集英社)に掲載されたインタビューのなかで和田はこれからの活動について<アイドルの在り方の解釈を多様にすることが一番の目的>と語っている。
その発言は、和田自身が現在の<アイドルの在り方>が<多様>ではないと認識していることの裏返しでもある。
「月刊エンタメ」(徳間書店)2019年7月号に掲載された、みうらじゅんとの対談企画でも、和田の語りは興味深い。
<いわゆるアイドルの一般的なイメージってあるじゃないですか。『黒髪ロングで、おしとやかで……』みたいな。それって結局いろんな人の欲望で作り上げられたイメージでしかないんですよ。私はアイドルをやりながら、そのことに気づいてしまったんですね>
<気づいた以上、私はそこを変えたかった。それはアイドルを否定するということじゃないんです。アイドルのあり方を考えていくってことなんですよ。この部分を今のままにしていたら、アイドルというジャンルはもちろん、世の中の女の子の将来も暗くなると思うので>
和田彩花は「議論のきっかけ」を提示するためにアイドルを続ける
とはいえ、和田自身もこれまでの「アイドル」像を全否定しているわけではない。
「CDジャーナル」(音楽出版社)2019年5月・6月合併号のインタビューでは<リアリティだけでは物語として成立しないとき、ちょっとしたファンタジーがあったほうが逆に心に来るものもあるじゃないですか>とも語っており、彼女自身もアイドルがつくる「虚構」の必然性も認めている。
ただ、時代が移り変わるなかで、これまで送り手も受け手もなんの違和感もなくスルーしていた「ファンタジー」の在り方を考え直さなくてはならないときが来ているのも事実だ。
それは簡単に結果が出る作業ではない。彼女自身<すごく難しいと思います>と認めている。
ただ、希望は捨てていない。彼女は<それは表現の仕方でどうにかできると思う>と語る。表現の在り方を工夫することで、これまでの「ファンタジー」を全否定することなく、かといって、女性をある一定の枠のなかに押し込めるようなアイドルのかたちでもない、オルタナティブなスタイルをつくることができる可能性はあるのだ。
それがどのようなかたちなのかは、彼女のなかでもまだ具体的に示せるほど固まっていないのかもしれない。ただ、彼女によって「議論のきっかけ」が社会に提示されることには意味がある。これまでまともに議論されたことがないトピックだからだ。前掲「CDジャーナル」のなかで彼女はこんなことも語っている。
<もっと広い分野で考えられることなので、ちゃんと考えていかないといけない。アイドル自身にも“こういうことも可能なんだよ”って考え方すら浸透していないから。そこに興味を持つこともないし、まず、そもそもの機会がない。自分たち自身で考えないといけないし、自分たち自身で責任を持っていかないといけないから、だったら私がアイドルを続けて、私が発信したりとか、歌とかダンスとかを使って関心があることを表現できたらものすごく説得力が出るなと思ったんです>
和田が提示した「議論のきっかけ」は後進に引き継がれ、「リアリティ」と「ファンタジー」が同居したかたちの新しいアイドル像がつくりだされるかもしれない。
それは、練習生的な立ち位置の「ハロプロエッグ」(現在の名称は「ハロプロ研修生」)時代から数えると15年もの間、ハロー!プロジェクトのように伝統ある場所で活躍し続け、旧来のアイドルの価値観も知り尽くしている彼女だからこそできる作業なのかもしれない。
卒業後の和田彩花がどんな表現をしていくのか、楽しみにしていたい。
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