「30歳までにドデカいことをやってやるんやッ」宇崎竜童は実在の銀行襲撃犯に感情移入していた!?
#映画 #インタビュー
向田邦子、原田芳雄らとの思い出
――『曽根崎心中』『TATOOあり』に主演された後も、個性派俳優としての活躍が続きました。1979年と80年に放映されたNHKドラマ『阿修羅のごとく』も素晴しい作品でした。
宇崎 あれは向田邦子さんの脚本、和田勉さんの演出によるところが大きな作品でした。いしだあゆみさんと交際する、あまりピリッとしない男の役でした。僕はいい女性に岡惚れしてしまう男の役がどうも多い(笑)。脚本を書き上げる前の向田さんに会ったんですが、「こういう素人さんの役には、何か背負わせたほうがいいのよね」と言って、それで僕の演じる役は吃音症という設定になったんです。「あなた、台詞が出てこなくても、演技はそのまま続ければいいんだから」と僕に救いの手を差し伸ばしてくれたんです。共演者も超ベテランたちばかりで、大変勉強になったドラマでした。
――阿木燿子さんと夫婦役で共演された実写版『デビルマン』(04)も忘れられない作品です。
宇崎 あっ〜、『デビルマン』!?
――デビルマンこと不動明を匿っていたために、牧村家は魔女狩りに遭ってしまう。死を覚悟したとき、阿木「浮気をしたことある?」、宇崎「浮気したことないよ」という台詞のやりとりは脳裏に焼き付いて離れません。
宇崎 すごく緊迫した場面なのに、間の抜けたシーンになっちゃったよね(笑)。いや〜、あの監督は変わった方でした。
――那須博之監督ですね。奥さまの那須真知子さんが『デビルマン』の脚本を書いていました。
宇崎 東大出身の頭のいい監督なんですよ。質問すると、ものすごく論理的に説明をしてくれるんだけど、ほとんど理解できなかった。それで、ちょっと質問すると、延々20分くらい説明が続くんです。これだと現場を止めてしまうなと思い、1〜2回質問した後は尋ねるのは止めたんです。阿木との共演は面白かったですよ。自宅に帰れば夫婦なんだけど、撮影中はお互いに夫婦役を楽しんで演じることができたと思います。
――『TATOOあり』で共演された原田芳雄さん、宇崎さんが監督した『魚からダイオキシン!!』(92)に主演した内田裕也さん……、ロックな人たちが次々と亡くなっていきました。
宇崎 そうだね……。やっぱり、若い頃に無茶してたのかな。原田芳雄さんはバーボンを呑みながら、レコーディングしていたからね(笑)。いくら呑んでも歌に全然影響しないのが、すごかった。原田さんは俳優以上に、歌手として才能があったと僕は思っているんです。みんなさっさと逝ってしまうんだよなぁ、今は平均寿命がこれだけ延びたのにね。
(取材・文=長野辰次、撮影=荒熊流星)
●『TATOO〈刺青〉あり』
監督/高橋伴明 脚本/西岡琢也 音楽/宇崎竜童
プロデューサー/井筒和幸 助監督/水谷俊之 監督助手/米田彰、周防正 製作進行/福岡芳穂
出演/宇崎竜童、関根恵子、渡辺美佐子、泉谷しげる、原田芳雄、植木等、西川のりお、上方よしお、ポール牧
(c)1979 有馬孝/東宝
※6月12日(水)よりキングレコードよりHDニューマスター版ブルーレイ&DVDが発売・販売
●『曽根崎心中』
原作/近松門左衛門 監督/増村保造 脚本/白坂依志夫 音楽/宇崎竜童
出演/宇崎竜童、梶芽衣子、井川比佐志、左幸子、橋本巧
(c)1978 藤井慶太/東宝
※キングレコードより2019年内にHDニューマスター版ブルーレイ&DVDが発売・販売予定
●宇崎竜童(うざき・りゅうどう)
1946年京都府生まれ。73年に「ダウン・タウン・ブキウギ・バンド」を結成し、レコードデビュー。白のツナギファッションで話題を呼び、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」が大ヒット。76年から作詞家・阿木燿子とのコンビで山口百恵に楽曲提供し、作曲家としても大いに活躍する。俳優としての主な出演作に映画『曽根崎心中』(78)、『その後の仁義なき戦い』(79)、『駅 STATION』(81)、『TATOO〈刺青〉あり』(82)、『上海バンスキング』(84)ほか多数。近年も『破門 ふたりのヤクビョーガミ』(17)や『波乗りオフィスへようこそ』(19)などで存在感のある役を演じている。7月からは全国ツアー「ロックンロールハート2019」がスタート。
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