モラハラ夫だった僕がそれに気づくまで――解決に向けた手掛かり(後編)
#インタビュー #DV #石徹白未亜 #モラハラ
加害者は特殊な人間ではない
――4回にわたってお話を伺ってきましたが、DV、虐待、モラハラ加害者がイライラするメカニズムは、「そんなことをしないと思っている人」にも心当たりのあるものでしたね。単に程度の問題なんだと。
中村 はい。条件がそろうと誰でも「そちら側」に回ってしまう可能性があるんです。
例えば金銭面や健康面に不安があると、心の余裕は一気になくなってしまいますよね。さらに学校や職場など、日ごろの大部分の時間を過ごす場所で疎外されでもしたら、どんどんまともな判断ができなくなっていきます。
――今満たされている人も、いつそうなるかは本当にわからないですよね。
中村 そうなんです。でも「誰だって危うい」と知っているだけでも違うと思います。自分だけは大丈夫と思っている人ほど危ないです。
――「自分だけは大丈夫」の根拠で、自分の育った家庭にモラハラなんてなかった、と思ってる人も多そうですが、気づいていないだけでしっかりモラハラだったケースもあるでしょうしね。
中村 そうです。それに、もし育った家庭が本当にいい家庭だったとしても、それ以外で足をすくわれるケースだって出てきます。新卒で入った企業がブラック企業で文化に染まってしまったとか、悪い友達と付き合いだしてから人が変わってしまったケースなどもありますよね。
――怪しげなネットワークビジネス、自己啓発、スピリチュアル系にハマったりとか、大人になってもいろいろ誘惑はありますよね。
現在は支援側にかかわっている中村さんですが、支援の現場で感じることはありますか?
中村 カウンセリングは個々人の状況に寄り添うため、人が必要です。日本家族再生センターでも、今ものすごく人材不足ですね。
ぜひ行政でも取り組んで欲しいところではあるんですが、一方で私自身、行政の現場で支援されている方の日々の奮闘を知っています。 行政の場合、マニュアルやルールとの兼ね合いがあります。人に合わせた支援が必要なのは分かっているが、それに合わせられないという歯がゆさの中、なんとかしたいと仕事をしている方はたくさんいます。行政はお役所仕事の悪いやつ、という言われ方は違うと伝えたいですね。
――最後に、DV、虐待、モラハラにおいて、問題が深刻化しないうちに加害側が気づくことが大切だと思うのですが、一方で加害側にしてみると、配偶者が逃げるほど事態が深刻にならないと気づけないというジレンマがありますよね。これに対して何かいいアイディアなどはあったりしますか。
中村 やはり日ごろから気楽に人と繋がれることが大切ですね。 家族とのことでちょっとモヤモヤがあったとしても、相談するなんてカッコ悪いという雰囲気はありますよね。特に男性はそうだと思います。
時間のかかることではありますが、そういうことは全然かっこ悪いことじゃない、という価値観を醸成させていくことが必要だと思います。
(文/石徹白未亜 [https://itoshiromia.com/])
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