モラハラ夫だった僕がそれに気づくまで――「加害者と被害者の共通点」
#インタビュー #DV #石徹白未亜 #モラハラ
壊れた家庭の加害者、被害者の「結婚、家庭願望」は人一倍強い
中村 僕の場合は、原家族が厳しくしんどい場所でした。ですが、自分の中で「家族は大事なもの」という価値観はとても強かったんです。「男は家庭を作って維持してなんぼだ」という気持ちが強くありました。だから、元奥さんに逃げられたときはショックでした。家庭が壊れてしまったと。
――『DVはなおる 続』を読んでいて、中村さん同様に、加害当事者は意外なくらい「家庭」や「結婚生活」への思い入れ、こだわり、憧れが強いように感じました。DVや虐待やモラハラで家庭を壊しているわりに、結婚や家庭への憧れがむしろ人一倍強いんですよね。結婚しないとダメ、独身でいる選択肢なんて信じられないというか。
中村 それも結局「家庭を作って認められたい」ということなのでしょうね。
――根深いですね。同書では被害者側の手記もありますが、被害者側にも似たものを感じます。「家族」への気持ちやこだわりが人一倍強く、読んでいる側としては逃げればいいのにと思ってしまうような壮絶な状況でも留まってしまう。
中村 はい。心の中で「家族」に依存する比重が高すぎるという点で、加害者と被害者は似ています。家族への依存が強すぎるので、ほかに行けないというか、そもそも家族以外の選択肢がないんです。
――中村さんと私は同い年です(1980年生まれ)。ですので、中村さんの話す「家庭と男と責任感と」という感じは、少し古風な印象を受けました。
中村 「男らしさ」へのこだわりが強かったんですよね。実際は全然男らしくなかったのですが。
――一方で「男らしさ」へのこだわりは、私たちより10年くらい若くなるとさらに薄れていっていると見ていて感じます。
中村 10歳下くらいから全然違ってきますよね。そういった「世代特有の家庭観」もあります。ですが、その人たちも「親の家庭観」を引きずりますから、一概に皆新しい価値観というわけでもないですね。さらに「親の世代特有の家庭観」も、子どもは引きずります。例えば今30歳の男性も、彼の父親が若い時に生まれた子なのか、年を取ってからできた子どもなのかでも、その彼の持つ家庭観のベースは変わっていきます。
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2回にわたって加害者側の心の動きについて解説してきた。次回からは解決に向けた手掛かりを引き続き中村氏に伺う。
(文/石徹白未亜 [https://itoshiromia.com/])
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