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日刊サイゾー トップ > エンタメ > テレビ  > 苦労芸人のネタに日村が呆然

天涯孤独の人生を前フリに、風俗キャッチの1人コント……『日村がゆく!』が表現した”お笑いのセオリー”

Abema『日村がゆく!』
桂枝雀(2代目)は、笑いの構造として「緊張の緩和」を唱えていた。簡単に説明すると「最初に緊張があり、それが緩和されると笑いが生じる」という考え方である。ならば、人間をシリアスな状況に置く“フリ”を用意し、それを緩和させてあげたら笑いは起こりやすくなるということだ。

 

父と母から見放された芸人が披露した「風俗キャッチ」の1人コント

 6月5日放送『日村がゆく!』(AbemaTV)が行ったのは、その名も「苦労芸人ネタGP」なる企画。芸人の苦労エピソードをまとめたVTRを流し、直後にその芸人のネタを見るという趣旨である。

 具体的に各芸人はどんな苦労を持ち、その半生を踏まえてどんなネタが生まれたのかをご紹介したい。

 鳥谷尾(とやお) だいきというピン芸人の人生は、苦労の連続である。ヤンキーの父親と箱入り娘だった母親の間に生まれた鳥谷尾。母が彼を身ごもったのは結婚前だった。母の妊娠を知った父は出産に反対した。

「経済的な問題だったのか……。(僕が生まれるのが)嫌だったんですかね?(笑) 」

 本来なら祝福されるべき新しい命の誕生を否定した父。しかし、母はこの小さな命を守った。

「母親が“この子だけは絶対に産みたい”と父親に強く言ってくれたので僕が生まれてきたって聞いてます」 

 父は荒くれ者である。家の畳や天井が壊れるほど暴れ、母には手を上げる危険人物。母は離婚を決意し、鳥谷尾を引き取った。その後、母は再婚する。

「(自立してから)毎年、僕が実家に帰ろうとするんですけど、やんわり断られるんですね 。おそらく、再婚相手の方に気を使ってるんじゃないかなと思います。たぶん、あんまり僕のこと良く思ってないんじゃないかな」

 両親に見放され、天涯孤独の身となった鳥谷尾。「親からは望まれなかったが、お笑い界で望まれる人になりたい」と大志を抱く彼のネタが楽しみだ。エピソードVTRの内容があまりに重かったため、司会のバナナマン・日村勇紀は「このままネタに行くの? マジか!?」と困惑している。

 幕が開くと、少年漫画の主人公のような顔をした鳥谷尾が派手な色のハッピを着てポーズを決めていた。どうやら、彼は1人コントを行うよう。

「俺は風俗キャッチマスター・シンヤ! 日本一の風俗キャッチマスターに、俺はなる!」

「なんですか、お兄さん。えっ、“今すぐイケる子、誰いるの”って? 風俗キャッチバトル、スタートだ! まずは俺のカード、今すぐイケる子! 高速手コキ&乳首攻めクイーン、ユミカ! ランキングは常に上位で、出勤は月2回のレアカード!」

 あまりにも低俗なネタすぎて、「ふざけんなよ(笑)」とあきれ顔の日村。ネタそのものではなく、人生がまったく反映されていない芸風を目の当たりにして吹いてしまっている。

 日村「それで行くのかい、君は。いいのか? 天涯孤独だなんて言って、いろんなライブで先にあんなVTR流してネタをやることなんかないんだぞ(笑)。お前はこの先、そのネタだけを背負って芸能界を戦っていくのか?」

 視聴者の意見を、日村が濁りなく代弁してくれた。バカ負けして生まれる種類の笑い。まさに、「緊張(苦労エピソード)」の「緩和(ネタ)」である。先人の理論にのっとって生まれた笑いだったと思う。

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