この主人公に共感した人は、かなりヤバいかも!? サイコパスコメディ『ハウス・ジャック・ビルト』
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サイコパスにはサイコパスなりの葛藤が?
ジャックの狂気がピークに達するのは、第3の殺人だ。この日は爽やかなピクニック日和。ジャックは交際中の女性(ソフィー・グローベール)と彼女のまだ幼い2人の息子を連れて、森へと出掛ける。楽しい1日になるはずだった。ところが、その楽しみ方は、母子とジャックとでは180度異なっていた。猟銃を手にしたジャックは、鹿の親子をハンティングするように母子に銃先を向ける。引き金を引く順番は、小さい子から、次にお兄ちゃん、そして母親。いちばん残酷な殺害方法だ。サイコパスであるジャックに、罪悪感はまるでない。快心の狩りを満喫するジャックだった。
ジャックは建築家を目指しており、湖畔の土地に理想の家を建てようとするが、これまでの殺人のようにはうまく進まない。いったい、サイコパスが考える理想の家とはどんなものなのだろうか。吉田大八監督の青春映画『桐島、部活やめるってよ』(12)では、校内きっての人気者・桐島にも悩みがあることが浮き彫りとなった。人気者には人気者としての高次元の苦悩があるらしい。今年4月にフリーになった元TBSの宇垣美里アナウンサーは「人それぞれに地獄がある」と語った。宇垣アナの言葉に従えば、サイコパスにはサイコパスなりの、常人とは異なる夢と葛藤があるということになる。理解しがたい世界だが……。クライマックスでジャックの考える理想の家がようやく完成するが、これはもう苦笑せずにはいられない。
暴力の限りを尽くしたジャックは、最終的には現実世界を離れ、中世の詩人ダンテが書き残した叙事詩「神曲」の世界へと飛び込んでいく。ジャックをあちらの世界へと案内するのは、「神曲」と同様、ヴァージことローマの詩人ウェルギリウス(ブルーノ・ガンツ)だ。サイコパスの主観で描かれた『ハウス・ジャック・ビルト』は、ますますシュールなステージへと突入する。
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