祝・三陸鉄道リアス線開業! 経営難続くローカル鉄道の真実とは?『絶滅危惧鉄道2019 』
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第三セクターという言葉をご存じだろうか? 国や地方公共団体(第一セクター)と、民間企業(第二セクター)が共同出資して設立した法人を指す語で、鉄道以外にも上下水道などの公共性の強い事業や、地域振興・観光開発などを目的として、全国にあまたの第三セクター会社が存在している。自治体が直接運営するよりも、民間的な発想での経営が可能で、同時に自治体が出資者となることにより、公共性も担保できるというシステムだ。国鉄再建法が成立し、国鉄がJRへと民営化された80年代以降、多くの第三セクター鉄道が全国各地に誕生した。
第三セクターの定義に基づくと、ゆりかもめやりんかい線、つくばエクスプレスなども第三セクター鉄道に含まれるが、一般に第三セクター鉄道という場合、主として旧国鉄の赤字路線を引き継いで運営している路線を指す。『絶滅危惧鉄道2019』(イカロス出版)は、存続の危ぶまれる各地の三セク鉄道に迫ったムック本だ。2019年4月1日をもって廃止となった夕張線(石勝線夕張支線)をはじめ、ムーミン列車など観光路線施策が成功したいすみ鉄道、中国山地を貫く特急を運行し、黒字を上げ続けている三セク鉄道の優良児智頭急行など、全国津々浦々、さまざまな事情を抱えた三セク鉄道を網羅し、一挙に紹介している。法改正や社会背景にも触れられ、三セク鉄道を通して世の中の動向を知ることができる良書だ。
中でも、震災から8年の時を経て新たに開業した三陸鉄道リアス線は特集ページで大きく取り上げられている。東日本大震災以来、長らく不通となっていたJR東日本山田線の宮古駅~釜石駅間が19年3月23日に復旧され、三陸鉄道の南リアス線・北リアス線と統合し、JRから三陸鉄道に移管して運行が再開された。三陸海岸を縦貫する盛駅~久慈駅間の総距離は163kmと、三セク鉄道では日本一の長さを誇る。終点の久慈駅はNHK連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台として有名で、今も多くの観光客が訪れるという。
震災の残した爪痕は深く、特に岩手県沿岸部は甚大な被害を受けた。上閉伊郡(かみへいぐん)の大槌駅は駅舎ごと津波に流され、同2月に新駅舎が竣工するまで完全な復旧がかわなかった。ターミナルの盛駅とJR大船渡線を接続する鉄路は、現在も途切れたままとなっている。そんな中、被災地の希望の光となったのが“震災復興列車”だ。三陸鉄道北リアス線は、震災からわずか5日後の2011年3月16日、久慈~陸中野田間の運転を再開。3月いっぱいは運賃を取らない無料運行を行った。
三陸鉄道旅客営業部副部長の冨手淳さんは「あの復興列車がなかったら、三陸鉄道はずっと不通のままだったかもしれない。そうなると、そのまま廃止という話も出たことも考えられる。まさに復興に続く第一歩だったですね」(本書P29)と当時を振り返る。災害時の英断が、地域と路線の危機を救ったのだ。
観光客誘致合戦を繰り広げる都市近郊の路線。接続改良により利便性が増し、黒字化に成功した路線。経営破綻し、廃止を待つばかりのローカル線。三陸鉄道のほかにも、絶滅が危惧される三セク鉄道はたくさんある。時代の流れとはいえ、草むす隘路を抜け、海辺の崖っぷちを走るローカル鉄道がなくなるのはあまりに寂しい。民営化により、競争の波にさらされた三セク鉄道の奮闘ぶりを応援したい。
(文=平野遼)
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