『きのう何食べた?』年上のカップルが伝える、ゲイとして生きる苦しみ
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「ビタ一文」という言葉に込められた苦しみ
今回の内容は、原作でも人気の高いエピソードだ。シロさんがもてなした自宅での食事会で、テツさんはシロさんに相談した。
「僕が……歯を食いしばって貯めた金を、田舎の両親に……ビタ一文渡したくないんです」
原作で、テツさんはこの言葉をサラッと口にしていた。漫画版テツさんから感じたのは静かな怒りだったが、ドラマでのあのシーンからは苦しみがうかがえた。何があったか、詳細は語られない。しかし、両親からセクシャリティを理解されていないこと、つらい思いをしてきたこと、親と深い確執があることを伝えるには十分だった。短い言葉の中から背景を察することができた。テツさんが葛藤しながら言葉を発する間、ヨシくんはずっとテツさんの手を握っている。テツさんは居場所を見つけることができたのだと、2人を見て救われた気持ちになる。
彼らはシロさん&ケンジよりも年上のゲイカップルだ。この年齢差は大きい。親の意識がまるで違うはずである。かつて、ケンジは「シロさんは贅沢だよね。理解しようとしてくれる親に感謝してもいいんじゃない」と言っていた。ゲイの世界にはテツさんのような思いをした人がたくさんいるのだろう。同性愛への理解がほとんどなかった時代から生きるテツさんの苦しみが、「ビタ一文」という言葉に込められていた。
そんな2人から依頼を受けて、「事務所にいらしてください」と返答したシロさん。ゲイ同士、多くを語らずともわかり合える部分があったのだと思う。
シロさん→ケンジへの愛が伝わる第8話
養子縁組を結ぼうとしているヨシくん&テツさん。では、シロさん&ケンジの2人はどうか? 彼らは、法で守られる安定の立場にはいない。だからこそ、別れないために努力を惜しまないことが重要なのだ。
ケンジと仲直りしたくても、思いを伝えられなかったシロさん。ゴミを捨てに行くケンジを見て「このまま帰ってこないってことも、なくはないんだよな……」と立ち尽くすばかりだった。
一方、翌朝のケンジはシロさんに「ハンバーグが食べたい」と甘えた。リクエストに笑顔で応えたシロさんは「俺もいつか、あいつみたいになれる日が来るんだろうか」と自問する。冷たいイメージのあるシロさんだが、愛情表現が下手なだけなのだ。ケンジからすれば、「お前みたいになりたい」なんて、最高にうれしい言葉だ。
8話はシロさんからケンジへの愛が伝わる回だった。このカップルは、精神的に大人なケンジがシロさんのことを包んでいる。一瞬で崩れてもおかしくない関係性だからこそ、一瞬を大切に生きていく。「たまにはうまいの食わせてやりたい」とシロさんが冷蔵庫に入れておいた桃は、その表れではないか?
「あんまぁ~い! はぁ~。俺、すっごく愛されてる」
桃はケンジの大好物だ。
(文=寺西ジャジューカ)
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