「ありがとう」と抱きしめあったまま二人は別れを選んだ――ドラマ『パーフェクトワールド』第5話
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長沢の宣戦布告
樹のことを心配し、両親の反対を押し切って、東京へ戻ったつぐみ。樹の病院にいたのは、ヘルパーの長沢(中村ゆり)だった。
熱が下がらず、3日も排便がないという樹に、長沢は摘便(手で便を取り出すこと)をしようとする。それを見たつぐみは、自分がやると言い出す。しかし、樹はそれを拒否し、「病室から出てくれ」とお願いするのだ。
好きな女性に、惨めな姿を見られたくないという気持ちからだろうか。キレイな関係の恋人とは、キレイなままでいたかったのかもしれない。
二人のやりとりを見つめる長沢の瞳。それは、怒りのような、哀れみのような、もしかしたら勝ち誇ったような、そんな複雑な目をしていた。
そしてつぐみと二人になった時、長沢は宣言する。「私も樹が好き。あなたよりも彼の役に立つ自信がある」。
つぐみが病院から帰る時、樹は、是枝がつぐみを背負って歩くシーンを目にする。文字通り、元久の言った「つぐみを背負って生きている」是枝の姿。おそらく、そこで樹は別れを決意したのだろう。
幸い、樹の病状は重いものではなかった。回復した樹は、つぐみをデートに誘う。デートの終わり、二人きりになったところで、樹は、松本で過ごした学生時代を思い出し、「あの頃につぐみと会えてたら」と話す。「今までありがとう」、そう言って別れを告げるのだ。
つぐみは、その思いを受け入れたのだろうか? ただ泣きじゃくるばかりではあったが、彼女の心の中には、長沢から言われた言葉や、両親の気持ち、是枝の存在など、さまざまな思いが交錯していたことだろう。別れを決断していてもおかしくない。
人と人との関係には、目に見えるものと目に見えないものがある。障害を持ったことの辛さ、周囲の人の思いや反応、言葉にして言われたことは、まだ“見える”ものなのだ。それとは別に、相手を愛おしく思い、一緒にいたい、幸せにしてあげたいと思う気持ちは、定量的に感じることが難しい。“見えない”世界だと言ってもいい。
現実と理想、その二つの世界を比べた中で、つぐみは結論を出していくことだろう。簡単には出ない答えを、どのように探っていくのか、今後も見守っていきたい。
(文=プレヤード)
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