ジワジワくる、ブレない地味女の魅力『野田ともうします。』
#マンガ #ザオリク的マンガ読み
平成の時代に新たに生まれたモテキーワードに、「メガネっ娘」「不思議ちゃん」「地味系女子」なんていうものがあります。特にマンガの世界においては、地味でいかにもモテなそうな女子がメガネを取ったらかわいいことが判明し、激モテする……みたいなギャップ萌えが多数登場するようになりました。ギャップ萌え、いいですよね。僕なんか、すべてのマンガにギャップ萌えの要素があればいいと思ってるほどです。
しかし、今回紹介する『野田ともうします。』(著・柘植 文)は、「メガネっ娘」「不思議ちゃん」「地味系女子」の要素をすべて兼ね備えていながら、それらがまったくモテ方面に作用していない、ガチでストイックな地味系女子マンガです。そして、その世界観・発想がすべて読者の斜め上を行く、究極の不思議ちゃんなのです。
この形容詞しがたいジワジワくる面白さをなんとか皆さんに伝えたい、それが本稿の趣旨であります。
本作のヒロイン・野田さんは、埼玉にあるFラン大学・東京平成大学の文学部ロシア文学科に通う女子大生。特技は親指を気持ち悪く動かせることで、その特技を生かして手影絵サークルに所属しています。この時点でいろいろとツッコミどころがありますが、まあとにかく花の女子大生とは程遠いキャラクターです。
加えて、奥が一切見えない度の強そうなメガネ、実用本位のガチな三つ編み、スーパーの衣料品売り場で買ったようなトレーナーにGパン姿という飾らないビジュアル。どれひとつ取ってもラブい要素がない、完璧な地味女子です。そんな野田さんの行動一つひとつが独特すぎてジワジワくる、気がつくとちょっと好きになっている……そんな作品です。野田さんの魅力を伝えるべく、エピソードの数々を紹介していきましょう。
あらゆる行動が女子大生らしくない
大学のクラス自己紹介の時、のみ込んだ金魚を口から出す「人間ポンプ」を披露する野田さん。当然、周囲にドン引きされます。しかし、まったく意に介さない、我が道を行くのが野田イズム。おそらく、ドン引きされていることすら気づいていないのです。
大学生といえば合コンですが、合コンの時の自己紹介では「石破防衛大臣のモノマネ」を披露し、思いっきりその場をシラケさせます。この空気の読めなさ加減も野田さんの魅力。そんな野田さんの合コンの感想は、太宰治の小説の一節を引用し、「自分には人間の生活というものが見当つかないのです」。いや、いくらなんでも見当ついてなさすぎだろ……。
クラスの女子ともっと打ち解けようとして、オシャレにスイーツの話を切り出してみる野田さん。「太宰治が心中した鎌倉の小動岬の近くの漁港で食べたシラスが甘くておいしかった」という話をしたところ、完全に無視されました。それ、スイーツの話じゃねーだろ!
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