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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > かわぐちかいじ『空母いぶき』実写化
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.531

日本領土が武装勢力に占拠されたら、どうする!? かわぐちかいじの世界を初実写化『空母いぶき』

「日本人を否定したい欲望と誇りに思いたい欲望が両方ある」

原作には登場しないオリジナルキャラクターとなるネットニュース社の記者・本多裕子(本田翼)。物語の行方を大きく左右することに。

 骨太な作風で人気の漫画家かわぐちかいじだが、どのようなスタンスで軍事漫画を描き続けているのだろうか。歴史改変SF『ジパング』連載時(2000年~2009年)のインタビューを読むと興味深いコメントがあったので、その一部を紹介したい。

かわぐちかいじ「僕の中には過去の日本人を否定したいという欲望と誇りに思いたいという欲望が両方あります。なぜあんな戦争(太平洋戦争)をしたのか、日本人のダメさ加減をきちんと掘り起こして描かなければいけないと思う反面、日本人を誇りたいという気持ちもある。(中略)マンガで日本人を描こうとするとダメだなと思う面と誇りに思う両面が、いつも自分の中で相克しているんです。マンガを読んでくれている人たちもその相克はみんな持っているんじゃないでしょうか。日本人を賛美したいという気持ちの裏側には、弱さも抱えているんじゃないかと思います。僕はそこをマンガの中で問いかけていきたいなと思っているんです」(『創』2005年6月号)

 映画版『空母いぶき』を撮ったのは、1948年生まれのかわぐちかいじと同世代であるテレビディレクター出身の若松節朗監督(1949年生まれ)。映画『ホワイトアウト』(00)では巨大ダムを襲うテロとの戦い、『沈まぬ太陽』(09)ではナショナル・フラッグ・キャリアの座に胡座をかく大企業が沈没船のように傾く姿を描いた。東京五輪が開催される2020年には、福島第一原発事故の際に被曝の恐怖にさらされながらも現場に残って事故対応に尽力した作業員たちを主人公にした『Fukushima50』の公開が予定されている。若松監督が撮る映画も、日本人が持つ強さと弱さの二面性がテーマとなっているといえるだろう。若松監督のフィルモグラフィーを見ると、平和という名の日常生活を享受するために日本人は大変な代償を支払っていることに気づかせられる。

(文=長野辰次)

『空母いぶき』
原作/かわぐちかいじ 企画/福井晴敏 脚本/伊藤和典、長谷川康夫 音楽/岩代太郎 監督/若松節朗
出演/西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、小倉久寛、髙嶋政宏、玉木宏、戸次重幸、市原隼人、堂珍嘉邦、片桐仁、和田正人、石田法嗣、平埜生成、土村芳、深川麻衣、山内圭哉、中井貴一、村上淳、吉田栄作、工藤俊作、金井勇太、中村育二、益岡徹、斉藤由貴、藤竜也、佐藤浩市
配給/キノフィルムズ、木下グループ 5月24日(金)より全国ロードショー
(c)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/「空母いぶき」フィルムパートナーズ
https://kuboibuki.jp

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最終更新:2019/05/17 22:30
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