『いだてん』大河ドラマ史上最悪の低視聴率を記録 宮藤官九郎の“打開策”とは
現在放送中のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(以下、『いだてん』)。ドラマの内容以上に視聴率の苦戦がしばしば話題になってしまう作品だが、ついに大河ドラマ史上のワースト記録をつくってしまった。
ビデオリサーチの調べ(以下すべて同じ)によると、4月28日に放送された第16回の平均視聴率(関東地区)は7.1%。これは2012年11月18日放送『平清盛』の7.3%を下回る数字で、1963年から続く大河ドラマの長い歴史のなかで最低の記録となる。
『いだてん』視聴率低下でNHK放送総局長の態度も変化
振り返れば『いだてん』は、放送開始当初は調子が良かった。1月6日放送の初回は平均視聴率15.5%と幸先の良いスタートを記録している。
しかし、近現代史を描くという大河ドラマとしては珍しい試み、2つの時間軸(1910年代と1960年代)を行き来する複雑なストーリー構成、宮藤官九郎脚本の持ち味でもある小ネタの応酬や速いセリフ回し、といったものが従来の大河ドラマ視聴者の需要に合わず、視聴率は右肩下がりを続けた。そして、第6話にして早くも2ケタを切ってしまう。
とはいえ、NHK側にとって『いだてん』は、マンネリ化の著しい大河ドラマというコンテンツに新しい風を吹かせるためのチャレンジであり、賛否両論あることは重々承知であったようだ。当初は<1回1回のリアルタイム(視聴率)はそんなに気にはしていません>という公式の発言まで出ていた。
1月23日に開かれた定例会見で木田幸紀放送総局長は『いだてん』について、<宮藤官九郎さんの脚本の世界は凄く面白かったという人と、わかりにくかったという人の意見が交錯する。思い出せば『あまちゃん』の始めの方もそんな感じだったなと>と、過去の宮藤官九郎脚本作品のデータを参照したうえで、<宮藤脚本はすでにいろいろな仕掛けが張り巡らされているんです。先にいくと、これはあの時はあれがこうなってたのかとなる。おそらく今回もそうなっていると思う。1回見てすべてが分かるものではない。あとで戻ってみてもらうという、そういう楽しみ方になるのかなと>と、『いだてん』を分析。そのうえで、<1回1回のリアルタイム(視聴率)はそんなに気にはしていません>と語っている。
NHK側としては目先の数字に踊らされるつもりはないとはっきり明言したわけだが、それも長くは続かなかった。
2月13日の定例会見では木田放送総局長の口から、物語の分かりにくい部分をPRや解説番組で補うテコ入れ策が初めて語られた。
また、<1回1回のリアルタイムの視聴率はあまり気にしない>と改めて念押しする一方で、<リアルタイムでも少しでも多くの人に、ということに越したことはない>とも発言。「求めるのは作品の“中身”で、数字は性急に求めない」という決意は短い期間でいくぶんかトーンダウンしてしまった。
『いだてん』のん出演も立ち消え
『いだてん』といえば、「NHK×宮藤官九郎」の大成功例である『あまちゃん』の演者やスタッフが多く関わっている。それだけに、のん(能年玲奈)の出演もあるのではないかと噂されていた。
「FRIDAY」(講談社)は、昨年10月にのんと前所属事務所・レプロエンタテインメントの間で話し合いの場がもたれたと報じた。「FRIDAY」によれば、これは『いだてん』出演に向けての調整であり、『いだてん』制作陣はのんを第二部の1936年ベルリンオリンピック編に登場させ、ドラマ中盤の目玉としてキャスティングしようという計画があるとのことだった。
のんが演じるのではないかと噂されていたのは、1936年のベルリンオリンピックで日本人女性としては初めて金メダルを獲得した前畑秀子選手。地上波テレビから干されてしまっているのんがここでカムバックすれば大きな話題になるのは必定だったが、結果的に前畑秀子役として正式発表されたのは上白石萌歌だった。
とはいえ、のんとレプロの話し合いが『いだてん』にともなうものであるというのは、あくまで「FRIDAY」の見解であり、実際にそういう話があったのかどうかは定かではない。
ピエール瀧逮捕は『いだてん』視聴率に影響せず
また、『いだてん』といえば、ピエール瀧の逮捕にともなうトラブルもあった。
ピエール瀧は前半の主人公・金栗四三(六代目中村勘九郎)の盟友としてマラソン用の足袋開発に二人三脚で取り組む足袋職人・黒坂辛作を演じていたが、逮捕により出演シーンはすべてお蔵入りに。大人計画所属の三宅弘城が代役を務めることになった。
そんなワイドショーネタがあっただけに物見遊山な視聴者がNHKにチャンネルを合わせるかと思いきやそんなこともなく、ピエール瀧逮捕報道後も『いだてん』の視聴率はゆるやかに下降し続けた。
宮藤官九郎「これからの『いだてん』は大河ドラマっぽくなる」
ちなみに、「週刊文春」(文藝春秋)2019年5月2日・9日ゴールデンウィーク特大号のなかで宮藤官九郎は、ゴールデンウィーク以降の『いだてん』についてこのように語っている。
<関東大震災や二・二六事件など、題材としてはむしろここから教科書にも出てきて皆さんが知っている話になっていきます。ある意味、ようやく大河ドラマっぽくなるのかもしれません(笑)>
視聴率を見る限り<大河ドラマっぽくなる>のがいささか遅きに失したのかもしれない。
近現代に材をとった『いだてん』は、大河ドラマとしての新たな表現を探った挑戦の作品である。『いだてん』が成功すれば、これから先の可能性が開ける一方、大失敗に終わればこれまで以上のマンネリにつながっていくだろう。なんとか数字的にも成功させて、後進の作家たちにバトンをつなげてほしい。
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