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日刊サイゾー トップ  > 吉高由里子のチャラさという才能
ドラマ評論家・成馬零一の女優の花道

TBS『わたし、定時で帰ります。』シリアスな題材で光る、吉高由里子の“チャラさ”という才能

吉高の明るさの中にある暗さ

 しかし、当時からしゃべり方が軽妙でふわっとしていて、殺伐としたシーンを演じてもどこかユーモラスなチャラさが漂う。これは彼女が持つ天賦の才能だろう。逆にどれだけチャラいキャラを演じていても、常に暗い影が見え隠れする。

 園子温の映画『紀子の食卓』は、そんな吉高の明るさの中にある暗さが引き出された初期の代表作だろう。チャラさと暗さをオセロの表裏のようにひっくり返し、明るさの中にある暗さと、暗さの中にある明るさを体現してきた。だからこそ、女優として高く評価されるようになったのだ。

 やがて、20歳を越えると前田弘二のコメディ映画『婚前特急』や沖田修一監督の『横道世之介』などに出演し、コミカルな部分を強く打ち出した明るい作品が増えていく。そして連続テレビ小説『花子とアン』(NHK)で主演を務めたことで、彼女は国民的女優の一人に仲間入りを果たした。

 現在の彼女のイメージは、陽気なお姉ちゃんという感じだ。ヘラヘラしたしゃべり方はいつも軽く酔っ払っているみたいで、一緒にお酒を飲んだらさぞかし楽しいことだろう。

 その意味で彼女の一番のハマり役は、サントリー「トリス・ハイボール」のCM かもしれない。「ドリフ大爆笑のテーマ」の替え歌に乗ってハイボールを飲む吉高は、陽気で明るく健康的。いつもヘラヘラしているチャラいイメージは、このCMで完成した。

 吉高のこうしたキャラクターは、近年のドラマや映画においては悪目立ちしており、女優としての幅を狭めているようで不満だった。しかし『わたし、定時で帰ります。』の結衣は、彼女のキャラクターがうまく生かされている。ドラマで描かれる問題がシリアスで重いからこそ、吉高のチャラさの中にある優しさが救いとなるのだ。

 それは、キツイ現実に対する中和剤のようなものだ。本作を見て、吉高の女優としてのポテンシャルの高さをあらためて理解したような気がする。つらいご時世だからこそ、職場に一人、吉高がいてくれたらと思う。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

最終更新:2023/02/27 20:11
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