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「無力」であることを知って人はまた少し強くなる――ドラマ『パーフェクトワールド』第2話

「無力」を知ることの強さ

 そんなある日、車椅子バスケの後、食事をしていたメンバーに、「邪魔だ」と言いがかりをつけてきた人たちがいた。怒った晴人と小競り合いとなり、止めに入ったつぐみを、樹は守ることができなかった。

 無力感に苛まれる樹。「自分には何もできない」――そんな無力感は、誰しも感じたことがあるだろう。

 つぐみにしても、樹が受け入れてくれなければ、自分が力になることができないことに、無力感を感じていると思う。この「無力感との戦い」こそが、この物語の一つのテーマであるように思う。

 実際、今の世の中には「無力感」が溢れている。

 逆境に置かれた女性アイドルが運営と戦っていても、ファンは直接何かをすることはできない。選挙の投票率が過去最低と言われても、自分の一票で何かを動かせる気持ちになれない。「政治」とか「組織」とか「運命」に対して、確かに人は無力だ。それは、「障害」に対しても同じだろう。「一人でも声を上げれば何かが変わる」などと綺麗事を言うつもりはない。でも、「自分が無力である」と感じることは決して無駄ではないはずだ。

 無力だからどうするのか、力をつけるために努力することもできるだろう。その分人に優しくしようという気持ちにだってなれる。いずれにせよ、無力さを認識することで、人は少し強くなれるような気がする。

 何もできなかったことにもどかしさを感じ、つぐみの気持ちには応えられないと告げる樹。ショックを受けたつぐみに、樹の母・文乃から「会えないか」との連絡がくる。

 文乃から、事故に遭ってからの樹の苦労、そして母としての思いを聞いたつぐみは自分の思いを伝える決心をする。

 気持ちを伝えるために、樹のマンションを訪ねたつぐみ。そこで、チャコがいなくなったことを知らされ、一緒に探す。そこで自分の気持ちを告白するのだった。

 結局、チャコは逃げておらず、樹の部屋にいた。ほっとした二人は、気持ちを確かめあうかのように、そっとキスをする。

 ラストシーン、二人の傍らで丸くなって眠る子犬が可愛らしい。チャコの存在は、「弱い者」「誰かの助けを必要とするもの」を暗喩しているように思う。他人の世話にならなければ生活できない樹も、捨てられた子犬の世話をして、力になることができているのである。世話や迷惑はどちらか一方がかけるものではない。お互いが相互に影響し合って生きるのが、あるべき姿なのだ。

 世話をされているだけのように見えるチャコだって、樹とつぐみに多くの癒やしを与えていることだろう。

 さて、来週は「平成の大晦日」の特別番組のため放送はお休み。次回は2週間後となる。次の時代が過ぎていって、障害者の暮らしやすい社会になった頃、時代が変わる節目に、こんなドラマがあったことを、思い出すことがあればいいと思う。

(文=プレヤード)

 

最終更新:2019/04/24 20:00
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