寝た子を叩き起こす“慰安婦”ドキュメンタリー!! YouTuberが撮った白熱のディベート映画『主戦場』
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後半には、驚きの“事実”が……
企業や団体からの思惑に左右されないよう、クラウドファンディングで製作費を調達したミキ・デザキ監督。『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』(15)で知られるエロール・モリス監督、今村昌平監督、森達也監督らのドキュメンタリー映画はよく観るそうだが、『華氏911』(04)を大ヒットさせたマイケル・ムーア監督のような作品にはしたくなかったと言う。
ミキ・デザキ「マイケル・ムーア監督は最初から結論ありきで、一方的な立場から描いています。そうすればエンターテイメント性のある、面白おかしいものが撮れることは分かります。でも、それではプロパガンダ映画になってしまいます。僕自身がこの映画を撮り始めるまでは、慰安婦問題にはそれほど詳しくありませんでした。なので、双方の意見を聞く形で、映画を構成することにしたんです。日本で開かれている慰安婦問題のシンポジウムに通い、右派と左派の両陣営から影響力のあるオピニンオンリーダーたちを選び、出演をお願いしました。櫻井よしこさんはぜひ出てほしかったので、ケント・ギルバートさんから紹介してもらい、粘り強く出演交渉しました。出演者の中の数人からは、公開前に完成したものを見せてほしいと言われましたが、見せることで内容を修正することは断りました。それではジャーナリズム性を損なうことになりますから。どうしても見たいという人には、その人の出演したパートだけ見せるようにしました。不満がある場合はエンドロールでその旨をクレジットすると伝えましたが、特に不満を伝える連絡はなく済んでいます」
本作の後半には、スクープ性のある驚きの事実も浮かび上がる。ここでその内容に触れることは控えるが、慰安婦問題は日本と韓国だけの論争ではないことがはっきりと分かる。日本から韓国への合計8億ドル(当時の韓国の国家予算2年分)の資金援助を決めた1965年の「日韓基本条約」も、慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決させることを発表した2015年の「日韓合意」も、米国からの強い意向によって日韓両政権は握手したことが解説される。日本と韓国との間では泥沼化している慰安婦問題だが、米国をはじめとする第三国の動きによって今後大きく動くことが予測される。ミキ・デザキ監督は最後にこう語った。
ミキ・デザキ「この映画のタイトルは、『米国こそが、この歴史戦の主戦場だ』という出演者の発言から思いついたものです。米国でも慰安婦問題をめぐる情報戦はいろいろと起きています。でも、私はこう思うのです。本当の主戦場はみなさんの頭の中ではないのかと。この映画ではさまざまな意見を取り上げ、いろんな人物たちを映し出しています。映画をご覧になった方の頭の中は、きっと激しい闘いの場になるのではないでしょうか。いつか慰安婦問題が解決する日が訪れてほしい。そんな希望を込めた映画です」
右派と左派、双方の主張が分かりやすく一本にまとめられたディベート映画。本作を見終わった後、あたなは一体どちらに軍配を上げることになるだろうか。
(文=長野辰次)
『主戦場』
監督・脚本・撮影・編集・ナレーション/ミキ・デザキ
出演/トニー・マラーノ(テキサス親父)、藤木俊一、山本優美子、杉田水脈、藤岡信勝、ケント・ギルバート、櫻井よしこ、吉見義明、戸塚悦朗、ユン・ミヒャン、イン・ミョンオク、パク・ユハ、フランク・クィンテロ、渡辺美奈、エリック・マー、林博史、中野晃一、イ・ナヨン、フィリス・キム、キム・チャンロク、阿部浩己、俵義文、植村隆、中原道子、小林節、松本栄好、加瀬英明
配給/東風 4月20日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
(c)NO MAN PRODUCTIONS LLC
http://www.shusenjo.jp
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