『きのう何食べた?』原作超えシーン連発……シロさんの過去を暗喩した”いちごジャム作り”にニヤリ
#ドラマ #テレビ東京 #内野聖陽 #西島秀俊 #どらまっ子 #きのう何食べた?
過去を悔やむシロさんを暗喩する、いちごジャム作り
ケンジの嫉妬に、シロさんは誠実に対応する。仁美と付き合ったのは、女っ気の薄い子だったから。でも、付き合ってみると、やっぱり女の子は女の子だった。このままノンケの仮面をかぶっていくのはキツい。仁美と適当に付き合っていた自分。すると、すぐに仁美のほうから別れを切り出してきた。そのときは正直、ホッとした。
「もしあのまま仁美と付き合い続けていたら、俺、結婚とかしてたかもしれない。子どもだってできてたかもしれない。でも、ゲイであることはやめられないから、奥さんと子どもを裏切って彼氏作って。それでも家族を捨てられないから、結局、彼氏のことも傷つける。そういうの、続けてたと思う……。ゾッとするよ。仁美には悪いことしたって反省してる。だからもう俺は女性とのどうこうっていう、そういうのはないんだ」
今回のエピソードに、いちごジャム作りを持ってきたところが本当に素晴らしい。煮たいちごから出るアクをすくう工程は、ノンケを装い女性と交際するも「自分には無理」と再認識したシロさんの過去そのままだ。果物から色が抜け白っぽくなる変化は、「もう女性とは付き合わない」と心に決めるに至ったシロさんの変化を暗喩している。
原作のほうのシロさんは今ではすっかり悟りが入り、迷いもかなり抜けた。長い年月を経たカップルに、波風らしい波風が立つことはもうほとんどない。2人の間の感情の揺れ動きを描くドラマを見ていると懐かしさが湧き上がり、なんとも言えない気持ちになってしまった。
扱っているテーマが毎回、実は重い
前回のレビューでも書いたが、やはりこの作品は「グルメ」「同性愛」の要素を前面に押し出した人間ドラマである。
もし、シロさんとケンジが一生添い遂げたとしても、2人は子どもを授かることができない。だから、シロさんは老後のために貯蓄している。ケンジは姉妹の多い家庭に育ったが、シロさんは1人っ子だ。それを考えると、女性との交際歴を持つシロさんをケンジは意固地に責められない。だから、ケンジはシロさんの告白を正面から受け止めた。いちごジャムのトーストを手にわかり合った朝食のシーンは、第2話のハイライトだった。
サラッと描いているが、『きのう何食べた?』の扱うテーマは毎回重い。そこをチャーミングな作風が救っている。見た後、温かな気持ちになる。原作はもちろん、ドラマ版の今作も、結構奇跡的な出来栄えだと思う。
(文=寺西ジャジューカ)
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