昭和から平成、そして令和へ……時代と共に突っ走し続ける松任谷由実
#松任谷由実 #平成J-POPプレイバック!
まさに時代の象徴だったユーミン
僕が会社勤めをしていた80年代後半から90年代初めまでは、特にOLのみなさんがユーミンに心酔していた。それはもう、音楽を作るアーティストとしてだけでなく、恋愛の教祖のような存在として……なんて今言って、どのぐらいわかってもらえるだろうか。若い世代には伝わりづらいか。
うちのカミさんも「DESITINY」の歌詞の<どうしてなの 今日にかぎって/安いサンダルをはいてた>のくだりを(いまだに)強調する次第である。知らんがな。
毎年、年の瀬が迫るとクオリティの高いアルバムをリリースし、その間にはヒット曲を出し、そしてゴージャスな演出のツアーを行うユーミンは、まさに時代の象徴だった。彼女の作品やありようをバブル景気と共に語る見方は過去にされてきたと思うが、経済が右肩上がりの時代背景とユーミンの音楽とは本当に寄り添っているかのように感じられたものだ。この傾向は80年代中盤~後半にかけて特に顕著だったし、先ほど紹介した中でも、やはり90年代の途中までのシングルにはそんな時代の空気が反映されていた感がある。
もっとも、今とあの頃とでは、女性が置かれた立場も違う。世の中に昭和の考え方が厳然と続いていた平成初期でも、ユーミンのように強さを前面に出すような女性の生き方は、風当りもかなりキツかったのではないだろうか。言い換えれば、ユーミンはそうした女性像のパイオニアのひとりとして戦ってきたとも捉えることができる。
彼女は、時代と共に突っ走っていた。それこそ、平成の時代に使われ始めたJ-POPという言い方も、ユーミンのたたずまいと違和感なくハマっていたと思う。世間には、平成の初期まではバブルの残り香が漂っていたのだ。
転機は……やはり1995~96年か。日本では、95年に阪神・淡路大震災とオウム真理教による地下鉄サリン事件が起こった。ユーミンは96年に荒井由実(初期)時代の楽曲をライヴで演奏し、これがのちに創作への姿勢や活動ペースに影響を与えていった。
この何年かの彼女は、自分のペースで作品作りを続けている。だが、ユーミンの歌が、平成のJ-POPの一翼を担っていたのは、間違いない。
さて、話は先ほどの、僕が年末に観に行ったライヴに戻る。
このツアーは、ユーミンが長い期間をかけて行っているTIME MACHINE TOURの一環で、彼女のデビュー45周年を記念してのもの。これはまだ続行中だ。なんと今回はベスト選曲のセットリストで、しかもステージでは過去のライヴで行ってきた演出まで再現されているのだ。そこだけでも見どころが非常に多いコンサートだった。
なんたってユーミン45年の歴史と名曲群が次々と襲いかかってくるのだから、そりゃ感動しないわけがない。歌や演出を懐かしく感じるベテランのファンも多いだろう。僕も「ずいぶん若い頃にこんな曲書いてたんだなー」とか「このサウンドも今の時代にあえて再現してるのかー」などと思いながら過ごした、非常に面白く、また、楽しい体験ができたライヴだった。
ただ、僕個人はすごくひさしぶりにユーミンを観たものだから、あまり偉そうなことは言えないのだが……このツアーで、というか、数年前から彼女に対してシビアに向けられている意見がある。声のコンディションがあまり良くないことだ。
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