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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『さすらい温泉』不破万作が怪演

『さすらい温泉 遠藤憲一』ウルトラマンガイアの名作で印象残した不破万作が魅せた怪演

亀仙人 VS マタギ

 健さんは、失意の真歩に生きる気力を取り戻させるため、猟師だったという真歩の祖父に扮し思い出の猪鍋を振る舞う。

 無口だったという祖父を模しているのだろう、「子どもは真歩の心の中にいるよ」という励ましメッセージを「心臓付近を手で叩く」という選抜サッカー選手のようなジェスチャーで表現する健さん。

 昔から食べていた猪鍋で、固まった心が解きほぐされた瞬間、真歩の夫からの着信。そして、どこからともなく大きな声が。

「早く電話に出ろおおお! お前は、一人じゃねーぞ!」

 遠くで叫ぶ例のアロハの老人を見ながら、泣きそうになっている真歩。失踪以来、何度も無視している、今や唯一の家族となってしまった夫からの電話に出る。

 老人は真歩の亡くなった祖父だったのだ。

 真歩の持っていた御守りの力なのか、ずっと孫のピンチを見守っていたのだろう。

 剥ぎたてのような生々しい毛皮を着込み、まるでマタギのようなイカツイいでたちで祖父に成りきってたつもりの健さんだが、本物はアロハに麦わら、なんならサングラスという亀仙人の如きラフスタイル。

 だが、その飄々とした雰囲気が、余計に孫を思う真剣な気持ちを濃く映し出す。

 夫の電話に出た真歩を確認すると、老人はうれしそうにダブル親指立てのポーズをキメて煙と共に消えた。まるで往年の浪越徳治郎のように。

ウルトラマンガイアの伝説の回で「主役」を演じた不破

 不破万作の得体の知れない雰囲気が、この謎の老人役によくあっていた。

 さすが30年前、40になるかならないかの年で実写版・鬼太郎にて子泣き爺を演じたほどのオーラの持ち主。

 思い出すのは1999年に放送された『ウルトラマンガイア』(TBS系)29話「遠い町・ウクバール」の回。

 空想特撮シリーズへの原点回帰を目指し、ただのヒーローものとは違うシリアスな雰囲気の『ウルトラマンガイア』の中でも、この回は異色な話だった。

 この中で不破は、自分が空中都市ウクバールから来た宇宙人だと頑なに信じ、それを吹聴することで周りから疎まれて小馬鹿にされている配送員を演じた。

 開始15分を過ぎても怪獣どころか事件も起きず、寺島進演じる新人配送員と不破演じるベテラン配送員永田との配送コンビの日常が淡々と描かれる。

 最後にウクバールから来たと思われる怪獣ルクーが現れるのだが、なんの悪さもしないし、ガイアと戦うこともない、ただ現れてすぐに消えた。永田と共に。

 永田は本当に宇宙人だったのか? ウクバールは存在したのか? 怪獣は何しに来たのか? 永田はどこへ消えたのか?

 全ての謎を放置したまま物語は終わる。

 まるで短編映画を見てるような、これがウルトラマンだと忘れてしまうような独特な回だった。

 こういう浮世離れした役に不破はハマる。第2話のかんべちゃん(神戸浩)もそうだが、要所要所に感じるこだわりのキャスティングがドラマに厚みを持たせている。

 いよいよ健さんのさすらいもラスト1回。

 できることならどこかの温泉に浸かりながら、健さんとシンクロしつつ最後の「至福」を楽しみたい。
(文=柿田太郎)

最終更新:2019/04/03 20:00
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