『学校と先生』『シンドローム』『バンブルビー』~高校生と隕石と、もう戻ることのできない季節の話~
#映画 #本 #未来はいつも分からない
『バンブルビー』で描かれた、日常の小さな喜び
『バンブルビー』もまた、空から何かが落ちてくることによって物語が始まる。家族や同級生との軋轢を抱えた思春期真っ盛りのチャーリーは18歳の誕生日を迎えた日、バンブルビーと出会う。チャーリーはすぐに彼を受け入れ、名前をつける。トランスフォーマーシリーズのリブートとなる本作は、これまでの作品とは一線を画したものとなっている。それは、SFやアクションではなく、れっきとした青春映画であるからだ。宇宙人との出会いや交流といった80年代のスピルバーグ的映画への目配せと、ザ・スミスを筆頭とする音楽の使い方、そして『ブレックファスト・クラブ』(1985)オマージュといった、さまざまな要素が折り重なって、出会い、成長、別れが描かれる。
個人的に、たまらなかったのは、話すことのできないバンブルビーがカーステレオから流れるラジオの音楽によって会話をするところだ。なんて素敵な設定だろうか。物語終盤、バンブルビーはカーステレオからザ・スミスの音楽のワンフレーズを使ってチャーリーに言葉を投げかける。チャーリーは、「スミスで会話ができた!」と喜ぶ。このシーンは、好きな人と好きなものを共有できた多幸感がギュッと詰まった瞬間だった。CGがふんだんに使われ、非日常なアクションが繰り広げられる中での日常の小さな喜びに、どうしたって感動してしまう。
この3作は、どれも高校生が主人公だ。そしてフィクションである。17歳の私の首は伸びていないし、地球外生命体も侵略してきていないし、車に変形する友人もいなかった。けれども、そんなフィクションの中に、あの時のまなざしや小さな喜びを見つけ、もう戻ることのできない季節をふと思い出してしまうのだ。
●ミワリョウスケ
1994年生まれ。生活のこと、面白かった映画や演劇、ラジオなどについてブログを書いている。日記をまとめた本の販売も行っている。好きな食べ物はうなぎ。<http://miwa0524.hatenablog.com/>
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