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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 「イチロー引退」どう伝えた?
熱血!”文化系”スポーツ部

「イチロー引退」から1週間、メディアはどう伝えた?

『Going! Sports&News』(日本テレビ系)

 23日と24日、それぞれ違った視点でイチロー振り返り企画を展開した『Going!』。23日の放送で印象的だったのは「イチローの強肩ぶり」についてのインサート映像だった。

 元同僚にして元メジャーリーガー、長谷川滋利と田口壮がイチローの守備のすごさについて語っていくのだが、その際に流れた映像は、まずはオリックス時代の強肩ぶり。その後、コーナー後半では18日に行われた、マリナーズ対巨人のエキシビションマッチでの遠投映像を何度も何度も(それこそ10回近く)流していた。

 番組側の狙いとしては、「45歳でもまだ肩は衰えていない」と伝えたかったはず。なのに、その直前まで20代前半のイチローの姿を映していたがために、結果的にはイチローの衰えが露呈してしまった。あれは意図的だったのか、たまたまだったのか……。

 ちなみに、他局で「イチローの強肩ぶり」を示す際、当然のようにメジャー1年目の開幕直後、代名詞となった「レーザービーム」送球を流すのがお約束。だが、日テレでこの映像が流れることはない。

 これは、巨人戦を重視する日テレゆえ、長年にわたってMLBとの映像契約を結んでいないからだ(それゆえ、大谷翔平の活躍ぶりを伝える際も、写真を使った紙芝居形式がほとんどだ)。そんな日テレだが、今回、中継を担当したMLB日本開幕シリーズだけは別。むしろ、試合中の映像に関しては日テレ独占素材なのだ。普段、MLBに熱心でない局がイチロー引退の基幹局的な位置付けとなったのは、なんとも不思議な構図だった。

 一方、24日の『Going!』では、「秘蔵映像で振り返るイチロー」と題して、オリックス時代のイチローのオフショットを中心に展開。これまた、メジャ―映像が使えない日テレだからこその逆転の発想だ。

 その中で秀逸だったのは、94年、日本人初のシーズン200本安打を達成した際の単独インタビューで「今の気持ち」について質問した際、イチローが「おなかが減ってご飯を食べたいです」とコメントしていたこと。

 ご存じの通り、「おなか減ってきた……」は、今回の引退会見を切り上げる際にイチローが発した言葉。見事に20歳のイチローと45歳のイチローがリンクしたのだ。過去の膨大な素材からこの言葉を見つけた瞬間の担当ディレクターの喜んだ姿がまじまじと浮かぶ。資料探し、お疲れさまでした。

『S☆1』(TBS系)

 24日深夜放送の『S☆1』は、「ありがとうイチローSP! 未来に残すべきイチローの野球とは?」と題して、イチローの過去の言葉から、その偉業を振り返る企画だった。

 ここ数年、民放でイチローに最も密着していたのは、TBS系スポーツ番組。その“独占インタビュー”は『NEWS 23』や『S☆1』におけるキラーコンテンツだった。

 今回の『S☆1』は、その貴重な資産をしっかり生かした好企画であり、「現役最後の会見、すべての言葉が、名言だった」という始まりのナレーションから期待を抱かせるものに。中でも感慨深かったのは、次の言葉だ。

「野球界の中で、間違った言い伝えが存在している。野球はパワーだ、みたいな。明らかに僕は間違っていると思うし、何によってパワーが生まれるのかが大事であって、パワーが先に来てはいけない(中略)そこの部分では、退化しているんです、野球界は」

 今回の引退会見においてもイチローが言及した話題であり、若干、消化不良だったところをしっかりと補ってくれる良編集だった。

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