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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 「イチロー引退」どう伝えた?
熱血!”文化系”スポーツ部

「イチロー引退」から1週間、メディアはどう伝えた?

イチロー

 昭和の大スター・長嶋茂雄と王貞治の現役時代を見ていない。生まれていなかったのだから仕方がないとは思いつつ、野球ファンとしてはやるせなく感じるときがある。

 後年、イチローの現役時代を見たかどうかについても、きっと野球ファンの間で話題になるんだろうな……そんなことをあらためて考えさせられる、「イチロー引退」後の1週間だった。

 この間、スポーツ番組やニュース番組はもちろん、情報番組もイチロー一色。引退会見から一夜明けた22日の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)は、番組構成がなんと「イチロー」と「天気」の2つだけ。きっとクレームもあっただろうが、この決断には恐れ入った。

 ここまで極端ではないにせよ、各局・各番組、いかにほかとは違った視点でイチローの引退(もしくはイチローの偉業)を伝えるか、知恵を絞っていてとても興味深かった。いくつかの番組をピックアップして、それぞれの腐心のさまを振り返ってみたい。

『スポーツ酒場『語り亭』』(NHK BS1)

 ミッツ・マングローブがMCを務める不定期放送のこの番組。もともと22日に「メジャー開幕!45歳イチロー伝説」と題して番組が組まれており、前日までの開幕戦の模様と、45歳のシーズンがどうなるかを語り尽くす50分になるはずだった。それが引退の報を受け、急きょ「現役引退!45歳イチロー伝説」とテーマを変えての生放送に。この瞬発力と臨機応変さは、さすが“皆様のNHK”だ。

 秀逸だったのはゲストの顔ぶれ。元メジャーリーガーと並んで、マナカナの三倉茉奈&イチローモノマネの第一人者・ニッチロー’がいたこと。初めから「引退特番」を作ろうとしたのならば呼ばれなかったであろうこの2人がいたことで、番組にいい緩急が生まれていた。

 三倉茉奈といえば、子役時代にCMで共演して以来、イチローとは懇意の間柄。「実は初恋の人だったんじゃないの?」とミッツから問われて、「あ、それはないです」と即答したのは素晴らしかった。

 緩急の「緩」を務めたのが茉奈&ニッチロー’なら、「急」を担ったのがMLB解説でおなじみのAKI猪瀬だ。「MVPを獲得した2007年MLBオールスターでのランニングホームランにイチローの技術が集約されている」として、次のコメントを残していた。

「イチロー選手のすごさって、小さなことを積んでいく継続力。イチロー選手の数々のギネス記録の中で、唯一、継続的ではないカテゴリーがこの1本。刹那的な輝き。非常に、イチロー選手の中でユニーク。唯一無二の1本です」

 今回の引退発表後、数え切れないほどこのランニングホームランの映像を見たが、この視点を投げかけていたのはAKI猪瀬だけだったと思う。

 また、いつもアスリートに寄り添うミッツのまとめ方も素晴らしかった。

「最後の打席。空気を読めよ、という方も多いですけど、あれがセーフになっていたら、よりイチローさんの引退を受け入れられなかったと思う。まだ全然できるじゃん、と。あれくらいわかりやすい、ピリオド的なシーンを見ないと、納得できなかったと思う」

「アスリートという言葉だって、平成の時代になってから使われた言葉。野球界でアスリートという言葉が似合う選手なんていなかった。(中略)新しい時代の価値観を先導したのもイチローさんの功績だと思う」

 緊急生放送とあって、情報の間違いなどNHKらしからぬミスも出てミッツが声を荒らげる場面もあったが、それもご愛嬌。実に見応えのある50分だった。

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