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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 『闇金ウシジマくん』の完結とともにヤミ金業界も消える!?
【wezzy】

『闇金ウシジマくん』の完結とともに消える!? ヤミ金業界の裏事情

2004年に連載が始まり、長期にわたり人気を集めていた裏社会漫画『闇金ウシジマくん』(小学館)が3月4日発売の「週刊ビッグコミックスピリッツ」(同)で最終回を迎え、およそ15年の歴史に幕を下ろした。

 『闇金ウシジマくん』は、違法な高金利で金を貸し付けて利息を搾り取り続ける“闇”の金融会社「カウカウファイナンス」の社長・丑嶋馨(ウシジマカオル)が主人公。ウシジマや従業員たちが、債務者を執拗に追い込む姿を通じて、カネに翻弄される多重債務者やアウトローたちの人間模様、現代社会の闇を描いてきた。

 近年稀に見るヘビーでリアルな内容から、マンガ好きの間での評価は高く、熱心なファンを獲得。コミックスは最新刊の45巻(2019年2月28日発売)までで1700万部を超える累計発行部数を記録している。また、ウシジマ役に山田孝之をキャスティングして3度の実写ドラマ化、4作の映画が公開されており、広いファン層を獲得した稀代の“化け物コンテンツ”である。

 『闇金ウシジマくん』の連載がスタートした2000年代初頭はヤミ金業者が幅を利かせており、読者にも身近な話題だった。もちろんヤミ金業者はそれ以前から存在していたものの、90年代の終わりから00年代にかけて飛躍的に増加して社会問題化したという経緯があるのだ。こうした時代背景も、『闇金ウシジマくん』がヒットし愛された理由のひとつだろう。

 しかしここ最近では、ヤミ金問題や事件がニュースで取り上げられることが、以前より減ってきているという印象もある。平成が終わろうとする今、ヤミ金業者はどこでどのように存続しているのだろうか。2019年現在の闇金事情について、弁護士の猪野亨氏に解説してもらった。

貸付金の回収が立ち行かなくなったヤミ金業者、現在は振り込め詐欺へ
 まずは、現在でもヤミ金と呼ばれる業者は残っているのか、単刀直入に伺ってみた。

「一時、ヤミ金は下火になっていましたが、最近はまた暗躍し始めているという印象です。前と同じ債権者(金を貸す人)や同じグループが、手を変え品を変えて活動を続けているようです。

 昔のヤミ金は、新聞に広告を出すなどして堂々と存在していたものです。ですが今は、そういった広告を目にすることはほぼないですよね。近頃の利用者は、インターネットでヤミ金業者を見つけるパターンが多いようですが、『いったいどうやってこんな怪しい業者を見つけたのか』と不思議に思うようなところからお金を借りる人も少なくありません。ですから、どれほどの被害が出ているかは定かではないのですが、勢いを増しているというほどではないものの、存在していることは確かでしょう」(猪野氏)

 

 では、『闇金ウシジマくん』が連載を開始した2004年から現在に至るまでの約15年間で、ヤミ金業はどのような変化を遂げてきたのだろうか。

「ヤミ金が世間にはびこり始めた当初は、たとえば東京であれば正式に東京都へ貸金業として登録したうえで、違法な高金利で貸し付けを行う業者が問題になりました。しかし、これはすぐに廃れています。はじめに所在などをすべて登録する必要があるので、違法行為をするとすぐに足が付いてしまうからです。

 そこで、貸金業登録をしないヤミ金に主流が移っていくわけですが、暴利の返済に困った債務者の相談を受けた弁護は、金を借りたとはいえ違法なヤミ金業者に返済する義務はないとして対応することが一般的になっていきます。つまり、弁護士が間に入ることで、ヤミ金側が金を踏み倒されるようになったわけです。

 また、そもそもヤミ金から金を借りるのは、何らかの理由で普通の消費者金融からは借りられない人たちです。つまり、闇金がターゲットにしている層というのは、もともと貸し倒れのリスクが高い“訳アリ”の人。ヤミ金側としても、貸付金の回収が立ち行かなくなっていきました。

 そこでヤミ金業者が、次にどうシフトしていったかというと、元手のいらない“振り込め詐欺”でした。これなら踏み倒される心配もないため、ヤミ金から詐欺に鞍替えした業者は多かったはずです」(猪野氏)

そもそも、ヤミ金の被害は大きな問題ではない
 ヤミ金は、元手がないと利益が生まれない仕組みとなっている。踏み倒されるという大きなリスクを抱えているわけだ。しかしなぜ、再びヤミ金業者の動きが活発になり始めているのだろうか。

「そのことについては私も不思議に感じており、真相まではわかりません。ただ、あくまで予想ではありますが、振り込め詐欺が社会問題化したことで、以前ほど儲けられなくなってきたため裏の業者が多角化していき、振り込め詐欺からヤミ金に舞い戻った手合いも多いのではないかと考えています。

  世間には、とにかく金を借りたいという需要は少なからずあるため、そういった人々にまたつけ込もうとしているのではないか、という印象を受けますね。ですが、現状の取り締まりの厳しさなどを考えれば、全盛期の頃より金を回収することは難しいはずで、本当に儲かっているのかについては疑問もありますね」(猪野氏)

 では、この15年ほどで、ヤミ金の被害者を救済する体制は整ってきたのだろうか。

「救済とは言っても、じつはヤミ金の被害は、はなから大きな問題ではないんですよ。弁護士が間に入れば、違法なヤミ金業者からの督促はすぐに止まりますから。

ですから、もし『ヤミ金から借りてしまった、どうしよう』という方は、すぐに弁護士に相談することをおすすめしますね。自分でなんとか返済しようとして、複数のヤミ金から次から次へと借りてしまう人もいます。金を借りるときの条件として、職場や親、友達の連絡先を握られて、脅しに利用されてしまうというリスクもあります。当然、ヤミ金は違法行為ですので、弁護士や公の機関に相談することで、すぐに終わる問題であることを知っておいてほしいです」(猪野氏)

 

 弁護士に相談しただけでヤミ金業者が逃げ出してしまうのには、ある“裏”の理由もあるようだ。

「ヤミ金業者にとって、携帯電話の番号や銀行口座は、潰されたら困る大事な“ツール”なのです。現在は、警察の手が入ったり、弁護士が銀行に通知したりすると、即座に銀行口座が凍結されるように対策が進んでいます。そのため、返済先の口座を指定しても、債務者が弁護士に相談するなどすればすぐに潰されてしまう可能性が高いのです。口座の名義貸しもれっきとした犯罪ですから、ヤミ金業者からすると、次から次へと新しい口座を用意するのも至難の業。私の経験でも、ヤミ金業者と交渉中に『もう督促しないから口座は潰すな』と懇願されたことが何度かありました。

 このように、取り締まりは年々厳しくなっているので、現状のシステムのままヤミ金が存続していくことはないだろうと思います。結局、お金を貸しても踏み倒され、利息どころか元金も回収できていないのであれば、ヤミ金業者にしてみればとんだ“商売あがったり”でしょう。ヤミ金の仕組みには、早晩限界がくるだろうと私は見ています」(猪野氏)

 一時期は跳梁跋扈していたヤミ金だが、近年その勢いが衰えてきたという印象は、たしかに当たっていたようだ。そして猪野氏によれば、いずれ行き詰って衰退していく運命だろうとのこと。平成の間にピークを迎えたヤミ金は、平成とともに終わっていく運命にあるのかもしれない。

 

猪野 亨(いの・とおる)/弁護士
1968年生まれ。1992年、北海道大学法学部卒業。1998年に弁護士登録し、2000年に「いの法律事務所」を開設。現在はブログ等を通じて、司法改革や政治経済、世界情勢に至るまで、幅広い意見の発信もしている。
ブログ http://inotoru.blog.fc2.com/

 

(文・取材=後藤拓也[A4studio])

最終更新:2019/03/22 07:15
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