今、決戦の時が始まる――ドラマ『初めて恋をした日に読む話』第9話
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(前回までのレビューはこちらから)
多くのドラマは、登場人物の誰に感情移入するかで、見え方が違ってくる。
例えば、恋愛ドラマで、出てくる男優の仕草に心を奪われたとすれば、それは相手役の女性に感情移入していることになる。
ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)は、そのあたりの計算がちゃんとできている。匡平(横浜流星)を見てキュンキュンしている女性は、知らず知らずのうちに、順子(深田恭子)の気持ちを体感しているのだ。
一方、男性視点で考えると、その感覚は3つに分かれる。順子の可愛らしさやセクシーさに心惑わされる点では共通していても、匡平、雅志(永山絢斗)、山下(中村倫也)、それぞれの立場で違った世界が見えてくるからだ。第9話では、特に、従兄弟である雅志の気持ちが強く伝わってきた。
父親のスキャンダルから、一時は東大受験を諦めようとしていた匡平。担任の山下の働きで問題は収まったが、勉強の予定は遅れてしまっていた。順子はその遅れを取り戻すため、匡平、美香(吉川愛)、牧瀬(高梨臨)を自宅に連れていき、追い込みをかけていた。そこへ、意を決した表情で雅志がやってくる。
匡平らが帰った後、ベランダで2人きりになる順子と雅志。そこで、雅志は順子にキスをする。実は雅志は、会社からロシアへの転勤を打診されており、結婚に向けて思い切った行動に出たのだ。キスをされて、パニックになる順子。雅志のことは、どうしても「従兄弟」としてしか見ることができずにいたのだ。
思えばこのドラマ、男性たちが、“今までの関係をどう打ち破っていくか”を競っているような視点でも見ることができる。従兄弟同士、教師と生徒、昔振った相手と振られた男。それぞれの関係性から、一歩足を踏み出し、「恋愛関係」に持っていくまでの競争のようでもある。
実は、この「最初に出会った関係から一歩踏み出す」というのは意外に難しいものだ。お見合いや合コンで出会ったのならば、初めから恋愛・結婚という関係が見えているが、幼馴染や友達としての関係が長かった場合などは、そこから関係を深めていくためには、何かしらのきっかけが必要である。そこには、常に、「うまくいかなかったら、それまでの関係まで崩れてしまう」というリスクがつきまとう。
雅志が20年も気持ちを伝えられずにいたのは、順子との良好な関係が壊れてしまうことへの恐怖心もあったことだろう。
12月になり、順子と雅志は、親戚の結婚式に出席する。その後の集まりの席で、「付き合っている人はいないのか?」「誰かいい人を紹介して」などと、親戚中から集中攻撃をされてしまう。
私も経験があるが、この“いい年をした独身者が、親戚の集まりに行く”というのは、本当につらいものだ。特に、同世代の親戚が、皆家庭を持ち、幸せそうにしていたりすると、実にいたたまれない気持ちになる。「結婚しない生き方」も認められる社会になってはいるが、やはり、結婚して子どもを作ってという幸せに憧れたりもするのだ。
集まりの後、部屋で2人になった順子に、雅志は改めて自分の気持ちを告白し、プロポーズをする。何かを答えようとする順子に、雅志は言う。
「すぐ答えなくていい。少しは俺で悩め」
この言葉の本意はどこにあるだろう? 自分のことで悩んで欲しいともとれるし、簡単に断りの返事をされることを恐れたとも思える。
雅志に告白されたことを知った、友人の美和(安達祐実)は、順子の家に駆けつけ、悩む彼女に言う。「相手は捨て身で向かってきた。ちゃんと気持ちに答えるべき」。
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