第3次Queenブームの今読みたい、時空を超えた盗作スペクタクル 『僕はビートルズ』
#ザオリク的マンガ読み
ビートルズ乗っ取り計画を企てる、マコトのキャラがすごすぎる
このマンガのクレイジーな面白さを支えているのは、ビートルズ愛が強すぎるゆえに、いろいろとありえない行動を取るマコトの存在です。ファブ・フォーのデビューレコードでは不足しているレイとコンタのパートの代わりにプロのセッションミュージシャンを入れるのですが、完璧主義のマコトが、ビートルズのレコードとまったく同じように演奏することを要求します。
「譜面どおりに弾くのは当たり前だ、俺はそれ以上を求めてるんだ」
「あなたはこの曲を理解していない」
「譜面に縛られて全然グルーヴが伝わってこない」
それはもうボロックソに言います。当然ながら、ビートルズのレコードはこの世に存在していないので、聴いたことがない人にとってはむちゃな要求です。そのため、参加したセッションミュージシャンたちがついていけず、次々と辞めていきます。
そのほかにも、このマンガの設定だからこそ成立するマコトのビートルズ盗作名言の数々が、マジでサイコ野郎。
「なぜ英語の歌詞をつけたの?」
「最初から世界を視野に入れてるからですよ」
英語の曲しか書こうとしない理由について質問するマキ社長に対し、平然と答えるマコト。言うまでもなく、ビートルズのパクリだから、というのが本当の理由です。
「俺たちは動き出したんだ…俺たちこそがビートルズになるために、ビートルズは歴史に一つしか存在してはいけないんだ」
ビートルズの曲を自分たちの曲だとかたってデビューしてしまったファブ・フォー。大人気となり、もはや後に引けなくなった後のマコトの決意です。誰よりもビートルズを愛しているはずなのに……。結果としてビートルズを乗っ取ろうとしているその発想が狂ってますよね。
「俺たちは、悪魔に魂を売ってビートルズの曲を奪った。許されない罪を犯してでも、なれるのなら、ビートルズになりたかったんだ」
ビートルズが解散してしまったという報告を受け、自分たちがビートルズの曲を歌い継ぐしかない……と完全に開き直っているこのセリフ。単なるモノマネじゃなく、あくまで本物のビートルズに成り代わることにこだわってきたのです。まさしく悪魔の所業といえましょう。
本家ビートルズとの直接対決へ
実は本作の終盤では、デビューできずに解散したかと思われていたビートルズが、実は解散しておらず、満を持して新曲でデビューし、ファブ・フォーのメンバーと直接対決するシーンが出てきます。このシーンこそが真の作品のクライマックス。
本物のビートルズの演奏を間近で見て、本物との格の違いを思い知り、子どものように膝を抱えて号泣するファブ・フォーのメンバーたち、そして自分たちがビートルズの曲をパクってきたことを全世界に告白しようと決意します。その後、とんでもないラストへ……という展開になっています。
S村河内氏もビックリな稀代のパクりバンドが果たしてどんな最期を迎えるのか、皆さんにもぜひ読んでいただきたいです。
(文=「BLACK徒然草」管理人 じゃまおくん <http://ablackleaf.com/>)
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