ブレーク寸前だった若手女優がユーチューバーに! 人気急上昇中のinliving.「被写体としての魔力」
#女優の花道 #YouTuber
女優時代はカルト的な人気
そんな女優時代の彼女の魅力が余すところなく発揮されていたのが、映画『花に嵐』だろう。物語は岩切監督自身が演じる大学生の“ぼく”が、大学の映画サークルで借りたカメラで自分の映像日記を撮影していたところ、りりか演じる謎の少女と知り合う。彼女は“ぼく”に、未完で終わっている「ある学生映画」の続きを撮ってほしいと頼む。“ぼく”は彼女に翻弄される形で次々と無茶な撮影を要求されるのだが、その姿がフェイクドキュメンタリーテイストで展開され、どこまでがフィクションでどこからが現実かわからない虚実入り混じった展開となっていく。
りりかが演じる少女は、いわばミューズ(芸術の女神)なのだが、被写体としての彼女はとても魅力的で、岩切監督でなくても、彼女と一緒なら「何か新しい作品が撮れるのではないか?」と期待させる魔力がある。だからこそ、数々のクリエイターに愛され、短期間で彼女はカルト的な人気を博したのだ。
実はりりかは、芸能活動をする以前から知る人ぞ知る存在で、画像投稿ブログのTumblrに写真を多数投稿していた。その写真もinliving.と同様、どこかのアパートで暮らす彼女の日常生活を撮影したものだったのだが、どの写真も妙な生活感があって色っぽく、まるで恋人が撮影したプライベート写真を、盗み見しているようだった。
これらの写真はセルフポートレートではなく、何人かのカメラマンの撮影したものだったが、思うに、りりかの魅力は自撮りではなく他者が撮影した時にこそ発揮される。つまり、カメラマンや映画監督といったクリエイターの目線を通した時に、クリエイターのイメージを媒介して彼女の輪郭が浮かび上がるのだ。
inliving.も、りりかとカメラマン・末永光の共同プロジェクトである。りりかと末永は以前に「♯きょうのねぐせ展」という個展を行っている。細かい説明はないが、おそらくこのinliving.も、動画を入り口にした新しい表現なのだろう。
彼女のHPには動画だけでなく、洋服や好きな本が紹介されているのだが、一つひとつの記事がコラムとして読み応えがある。彼女の好きなものを通して一つの世界観を提示しており、inliving.自体が2人の作品なのだとよくわかる。
HPには2019年6月28日というカレンダーがあり、「あと3か月です。」という表示がある。その日に何が起きるのか? 今からドキドキしている。
●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆
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