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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『さすらい温泉』酒井若菜の存在感

『さすらい温泉』初のマドンナとの両想い……変わらぬ魅力の酒井若菜を芝居をもっと見たい

■完全に料理対決ドラマ

 今回、健さんが扮したのは料理人。割烹着の中にワイシャツを着てネクタイを締める、あの神田川俊郎スタイル。

「私が厨房に立ちます」

 包丁を斜め上に掲げたままの見栄えがいいポーズで、倉本に啖呵を切る健さん。

 こういう時の包丁は出刃包丁とか柳葉包丁とか、先が尖ったものがしっくりくるイメージだが、今回健さんが掲げていたのは、四角い菜切り包丁。その意外さに笑ってしまったが、その理由は後に明らかになる。

 収録が始まり、満面の笑顔で進行するも、カメラが止まると同時に笑顔も止めて「正直に批評するからな?」と敵意をむき出しにする倉本。

 そういう態度を隠さないということはスタッフも全てわかっているのかもしれない。

「味がはっきりしませんね」

「こんなもんですかね」

「味付けが単調」

 どんな料理が出てきても、これ見よがしにきついコメントをする倉本。

 しかし、ラストの「特製伊勢海老の具足煮」に入っていた桂剥きされた大根を食べるなり、思わず「……うまい!」と漏らしてしまう。

 前日、倉本が刺身のツマの大根を残しているのを見て、あえてその苦手な大根を美味しく食わせるという勝負に出た健さんと、その攻めの姿勢に驚いた倉本。

「嫌いな食べ物も食材の組み合わせや調理次第で美味しく食べられるということです」

「……参りました!」

 もはや完全に料理対決漫画のようになった今回。割烹着を着ただけでなく、しっかりと桂剥きも出来る健さんがさすが、というか、ますます得体が知れない。

 しかし、カメラが止まっている時、「正直に批評するからな?」と、脅してるような言い方で、実は公正な審査を宣言していた倉本も、実はいい奴なのかもしれない。素直に負けを認めたし。

 

■まさかの両想い

 物語のラスト、「このままずっとうちに居てくれませんか?」と白昼堂々、真正面から健さんを抱きしめる女将。

 夢でも妄想でもなく、現実のシーンでだ。

 ともさかりえの時みたいに、別れた夫が戻ってくる的なオチかと思ったが、まさかの両想い。

 誰より健さんがこの展開に一番驚いた顔をしていた。

「この宿には健さんが必要です。それに私にも……」

 完全なる恋の告白。

 待ってましたとばかりに強く抱きしめ返しつつ、健さんが言う。

「こんな出会い待ってました!」

 誰に言ってるのかわからないほど客観性に富んだ、独り言のような想いの吐露。

 このまま野外でおっぱじめるのか? というほどの勢いだったが、そこに仲居(栗林里莉)が健さん宛てのファクスを持って駆け込んでくる。

「早く次の温泉に行け エンズタワー社長」

 エンズタワーとは遠藤憲一の個人事務所で、社長は彼の奥さんが務めていると第2話でディレクターが話していた。

「社長に言われたらどうしようもない。すんません。」

 憑き物が取れたように、あっさりその場を後にする健さん、というか遠藤。

 あれだけ男女として盛り上がったのに、いきなり放ったらかしにされる奇妙な唐突さを「えー……」という一言で表現しきった酒井はさすが。もっとコメディエンヌ的な芝居も見たかった。

 それぞれに配役の生きた良い回だったが、気になるのは、テレビクルーが誰一人として「遠藤憲一」に気づかなかったこと。

 それどころか、今回は料理人として番組に出演すらしてるので、放送されたらさすがに「あれ? なんで遠藤憲一が板前に?」と話題になってしまうのでは? と心配になるが、そうはならない。それだけ遠藤のバイプレイヤーとしての演技力が凄まじいということなのだろう。

 最後になるが、板前を演じた夙川アトムも、実に自然な脇役ぶりで、素晴らしいバイプレイヤーズのネクストジェネレーションぶりを見せてくれた。

 次回は伊香保温泉。

 ここでも健さんは懲りずに一目惚れをする模様。社長(奥さん)に見つからなければいいという考えなのか。バレないようにがんばれ、健さん!
(文=柿田太郎)

最終更新:2019/03/06 19:30
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