1文字1円ライターを大量育成!? 奄美大島が“ワーキングプア量産”の指摘に反論「働いてくださいといっているわけではない」
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鹿児島県の奄美大島・奄美市の育成支援事業でフリーライターが急増し、約100人が活躍しているとする報道が物議を醸している。活躍しているとされるフリーライターの記事報酬が2,000円から4,000円と激安なのだ。これは、新手の官製ワーキングプアなのか。実態を探った。
発端となったのは、2月21日に日本テレビのニュースサイト「日テレNEWS24」に掲載された「奄美大島でフリーライター急増中 魅力発信」という記事。ここでは、「奄美市は、観光情報の発信源としてフリーライターの育成に力を入れている」とし、約100人のライターが活動。「ほとんどが未経験の主婦や移住者」だという。
さらに記事では「一つの記事の報酬は2,000円から4,000円で、取材内容や文字数で価格はかわる」としている。これは、クラウドソーシングのサイトで募集されている、まとめサイトやアフィ系ブログなどの1文字1円仕事の値段だ。
奄美市では「フリーランスが最も働きやすい島化計画」として、フリーランスを「企業に属さず働く人。個人事業主。従業員4人未満の新規事業者も含む」と定義して、フリーランスによる新しい働き方改革を支援し、移住も呼びかけているという。
この事業を説明する平成28年7月の資料によれば、子育てワーカー支援として「子育てしながら年収150万のフリーランス育成」、仕事支援では「年収300万円のフリーランスの育成」という目標が掲げられている。
https://www.city.amami.lg.jp/shosui/documents/shimakakeikaku2016.pdf
仮に1記事4,000円で300万円を稼ごうとすれば、年に750本もの記事が採用される必要がある。取材経費を考えると、それ以上の本数が必要だ。
これは、フリーランスという言葉で飾りながら、市役所が低所得者を量産する、完全に破綻している事業なのではなかろうか。
「その当初の目標は、ライターのみならず、エンジニアであるとか、さまざまな職業を想定したものですから……」
電話で話を聞いた、奄美市役所商工観光部商水情報課フリーランス支援窓口の主査・稲田一史氏は、言葉を濁した。
稲田氏によれば、現在、奄美大島には、市の事業によるライター講座を受講した人と、それ以外で活動する人と二通りのフリーライターがいるという。うち、前者は平成27年から平成30年までで160人ほどだという。では、その中に、フリーライターを専業としている人はどれくらいいるのか?
「残念ながら、皆さん副業を……」(同)
さらに2,000円から4,000円は、あまりにも安い金額。奄美市が職業として育成を図るなら、改善をする必要があるのではないか。
「この事業を始める時の、クラウドソーシングの相場がそれくらいでした。市役所から単価を指示することはできませんが、市がこうした事業を始めたことで、地元の企業にお願いして、高単価の文章を書く仕事を発注してもらったりしています」(同)
その高単価とはいくらか?
「4,000円から5,000円です」(同)
まったくもって破綻しているようにしか見えないのだが、官製ワーキングプアを生み出しているのではないかと聞くと、稲田氏は反論する。
「うまくいってないかはわかりません。それに、必ずフリーライターで働いてくださいといっているわけではないから、官製ワーキングプアじゃないですよ。自分が、この仕事をしろといわれたら? そうですね、ちょっとそれは……」(同)
自分がやりたくないことを、素晴らしい仕事だと喧伝する奄美市。南海の“野麦峠”か何かなのか。
(文=昼間たかし)
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