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日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『刑事ゼロ』阿部進之介の存在感

『刑事ゼロ』沢村一樹と瀧本美織の名コンビぶり&阿部進之介の存在感が際立つ

 しかし、それでは今回の事件の犯人は誰? となったところで突然、山之辺が兵藤に銃を突きつけます。実は3年前の事件で意識不明になった立花みずきは生き別れた妹で、今回の事件はセブンを炙り出すために彼が仕組んだものだったのです。

 そのことに薄々勘づいていた時矢は、冷静になるよう説得を試みるのですが、山之辺の決意は固く、邪魔をするなら撃つと銃口を向けられてしまいます。

 しかし、お互いに庇い合う時矢と智佳の姿に、昔の自身と妹の姿を重ねた山之辺は殺意を喪失。残り5人の犯人たちを逮捕するよう時矢に託したところで今回は終了となりました。

 さて感想ですが、妹を自殺未遂へと追い込んだ犯人たちを捜すため、刑事が同じ罪を犯すという展開は、リアリティーの観点(倫理的にも)においてどうなの? と違和感を覚えてしまいました。

 ただ、それを演じた阿部自体はリアルそのもの。血なまぐさい事件を見つめ続けてきたことで厭世観を抱き、くたびれた雰囲気はあるものの、妹の復讐という一点だけには静かに怒りの炎を燃やす中堅刑事役を圧倒的な存在感で演じていました。

 阿部が重厚な演技を見せたからこそ、時矢と智佳の子どもじみた意地の張り合いの面白さが引き立ち、緩急のバランスがこれまでで一番優れた回に思えました。

 時矢のことを「おっさん子ども」のようだとなじり、机の上を整理整頓しろと命じるなど、まるで母親面の智佳ですが、時矢と言い争いをしている時は自身も子どもそのもの。回を追うごとに名コンビになってきてますね。だからこそ、山之辺に殺意を失わせた、お互いにムキになり庇い合うシーンが印象的かつ説得力のあるものになっていました。

 ところで今回、サカキバラが田所を殺した理由として、カレンが中年のおっさんによる“バ美肉(バーチャル美少女受肉)”だったからと告白していましたが、VTube市場は昨年頃から急速に勢いを増しているだけに、いずれ同じような事件が現実に起こるのではないかとちょっとゾッとしました。

 それと兵藤が、「現代は悪意が可視化されやすくなった」と口癖のように語っていましたけど、それは反対なんじゃないかな、と感じました。ネットを隠れ蓑にした闇取引が横行しているため、事件が起きることで初めてさまざまな悪意が表出する複雑な時代になったのではないかなぁ、と思います。

 何はともあれ、次週8話目ということでクライマックスに近づきつつあります。時矢の記憶は蘇るのか否か、放送を楽しみに待ちたいと思います。
(文=大羽鴨乃)

最終更新:2019/02/22 16:00
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