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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 高嶋政宏が嫌われないワケ
テレビウォッチャー・飲用てれびの「テレビ日記」

高嶋政宏、”変態公言”でもお茶の間から嫌われないワケ

撮影=名鹿祥史

テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(2月10~16日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

■高嶋政宏「食べ手の変態さっていうのも、これから要求されていくと思うんですね」

 何事も、やり過ぎるのはよくない。いくらポリフェノールが健康にいいからといって、赤ワインを飲みすぎたら、ただのアル中だ。極端に走らず中庸であることを良しとする考えは、洋の東西を問わず昔からある。

 先週11日、『石橋貴明のたいむとんねる』(フジテレビ系)に高嶋政宏が出演していた。高嶋といえば、昨年『変態紳士』(ぶんか社)という著書を出版し、SM好きをはじめアブノーマルな性癖を公言して話題になっている。

 この日の『たいむとんねる』は、「高嶋政宏の変態グルメの世界」と題し、高嶋おすすめの店でおすすめの料理を食べる企画が放送された。同番組では過去にも高嶋を迎え同様の企画を行っており、今回で3回目となる。

 まず高嶋が石橋貴明らを引き連れて向かったのは、ミシュランガイド2つ星を獲得している中国料理店。そこでキジの血を使った料理を食すのだという。しかし、料理が出てくる前に、高嶋は何か円筒形のものを取り出す。水素吸引器である。お店の人にミネラルウォーターを所望し、吸引器に水を入れる高嶋。そして、自身はすでに朝30分吸ってきたとして、石橋に水素を吸引するように求める。

 なぜ、食事の前に水素を吸うのか? 高嶋は説明する。

「キジの血、非常に繊細な味わいなんです。力強くて染み渡るような味を堪能するためには、食べ手のほうも毛細血管を正常な位置に戻して、味覚を元の状態に戻さないといけない」

 また、3軒目に訪れた宮崎料理店でおすすめの熱々の厚揚げをハフハフ言いながら食した高嶋は、自身のグルメ論を展開する。

「やっぱりね、食べ手の変態さっていうのも、これから要求されていくと思うんですね。だから熱いものは熱いうちに、いかに食べたときに外の……外界の空気と混ぜながら、技術でできるだけ板長が出した最高の状態のものを最高の状態のまま食べられるかどうかっていうのが、これから食べ手に要求されることなんですよ」

 作り手が提供した料理を最高の状態でいただくために、食べ手にもまた求められる姿勢がある。たとえばそれは、水素吸引などの下準備なのかもしれない。熱々の状態のものを外気と混ぜ合わせながらうまく食べる、口元の技術なのかもしれない。与えられたものをただ享受するだけではなく、何事かを備えなければならない。その意味で高嶋は、これからは食べ手にも変態であることが必要だというのだ。

 考えてみると、高嶋の発言に繰り返し出てくる「食べ手」という単語は、「作り手」に比べ、あまり一般的なものではない。「作り手」に対応する表現として「食べ手」という言葉が意図的に選択されているのだろうが、ここには、おいしさを追い求める「作り手」と同程度の熱量で食に向き合うことを良しとする、高嶋の姿勢が示されているように思える。

 SMなり、グルメなり、享楽を通じて自己を高めていくこと、趣味に対して自己啓発的であることが、高嶋にとって「変態」であるということなのかもしれない。 

 にしても、そのこだわりは過剰である。

 何事も、やり過ぎるのはよくない。けれど、そんなことはみんなわかっている。わかっちゃいるけどやめられないのが人の性(さが)だ。飲み過ぎるし、食べ過ぎる。だからこそ、過剰なこだわりを厭わず、あえて「変態」を公言する高嶋政宏に、人は惹かれる。というのは言い過ぎだろうか?

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